ビストロ・リッペ 一皿の思い
また来週、友だちと来る。そう言って帰った常連のおばあさんは、2度と来ることはなかった。がんを患っていた女性の最後の一皿になったと、知らされた。「目の前の一皿は、一期一会。そんな思いがあるから、一皿、一皿、真剣に作らないとお客さんに失礼になる」
そう話すのは、ビストロ・リッペのオーナーシェフ、中尾匡宏さん。18歳の時、洋食のコックを目指して、大阪のホテルに就職した。「そのころ、出てきたヌーベルキュイジーヌ(新しいフランス料理)に、自分のやっていることとの違いを感じた。すごい衝撃だった」
フレンチシェフ、三國清三さんの「皿の上に、僕がある」という料理本に出会ったのもきっかけになり、本格的にフレンチの世界へ進んだ。広島、神戸、長野のホテルで修業し、31歳の時、気軽にフランス料理が楽しめる店にしたいと、箕面市に店をオープンさせた。現在の店舗へは2003年に移転した。
中尾さんは、「素材を見た時に、盛り付けた皿のイメージが浮かぶ」と話す。頭の中で作ったジグソーパズルを組み立てるように、料理を仕上げる過程が好きだという。野菜をふんだんに使った料理を、信楽焼きの器にまるで絵を描くように盛り付けていく。出来あがった一皿は、フランス語で「ひと口のご馳走」という店名の通りだ。「何を組み合わせるか、ひらめきで工夫して作る」という中尾さんのアイデア料理を楽しみにしている客も多い。
ランチは3種類のコース料理のみ。人気のAコースは2100円。取材の日は、小エビのラヴィオリ野菜たっぷりのソース、トマト風味の野菜スープ、金目鯛のポアレ カキのポッシェとソバの実のリゾット添え大葉風味、9種類のデザート盛り合わせに、コーヒーか紅茶が付いていた。
スープ、パスタ、パンがセットになった幼稚園児向けのパスタセット(840円)もある。
(進藤郁美)
=地域密着新マチゴト豊中・池田」第8号(2010年11月1日)
更新日時 2010/11/02