阪大の先生㉗菅真城さん 大学アーカイブズの重要性
大学には多くの資料が保管されている。と聞けば、それは大学図書館のことだと思うだろう。しかし、学術的資料だけでなく、大学の組織活動の記録もまた、後世に残すべき大事な資料だ。それを保管し、公開する施設が大学アーカイブズであり、大阪大学でその仕事を担っているのが、菅真城(かん・まさき)准教授だ。
もともとは日本史を専攻し、平安時代の仏教などを研究していたが、前任地の広島大学で開学50年史の製作に携わり、そこから大学アーカイブズの世界にかかわるようになった。
2001年に情報公開法が施行され、2011年には公文書管理法が施行された。それによって保存期間が満了した法人文書の移管を受けるには、内閣から「国立公文書館等」の指定を受けることが必要となったが、全国86の国立大学のうち、その指定を受けているのは大阪大学を含め7大学に過ぎない。「このままでは歴史的に重要な法人文書が廃棄されてしまう。しかし、まだまだ教員にも事務職員にも、アーカイブズの重要性は十分に伝わっていない」と嘆息する。
広島大学時代には、アーカイブズから広島カープ設立に関する重要な資料を発見した。「広島大学設立資金を集めるために、阪神と東急の公式戦が広島で開かれた。それが満員の盛況を見せたことから、広島にも球団を作ろうという話になった。その流れを裏付ける資料が見付かった」。ちなみに菅さんはもともと近鉄ファンだったが、資料に触れたことで広島ファンに変わり、今は研究室に大きなカープの旗を掲げているほどになった。
アーカイブズに保管する資料は多岐に渡る。大学の刊行物は、冊子からイベントチラシまで網羅する。「どれが必要で、どれがいらないかの判別は難しいが、100年先の研究者から『何で残してないの?』と言われないように選んでいる。地道で終わりなき作業だが、誰かがやらねばならない」と、自負を見せる。
「アーカイブズは、実は身近なもの。母子手帳や子どものころの日記、成績表、ラブレターなんかもアーカイブズ。自分を構成する記録。それが組織や自治体、国になると範囲が広がるだけ」。誰もが自分のアルバムを懐かしく大切に思うように、大学アーカイブズも、未来の人にとって大切なものになる。(礒野健一)
更新日時 2013/12/12