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阪大の先生㉓早川和生さん 老年病を双子で研究

書類であふれる机と早川教授。センターでは成人の双子ボランティアを募集中。「一卵性でも二卵性でも大歓迎です」。資料請求はファクス(06-6879-2557)で

 大阪大学の吹田キャンパス(吹田市)に、双子を専門に研究するユニークな機関「ツインリサーチセンター」がある。2009年4月に、双子の研究機関として日本で初めて設立された。
 ツインリサーチセンター長は、大阪大学大学院医学系研究科保健学教授の早川和生さんだ。早川さんは認知症や高血圧など老年病の予防を主に研究しており、1万2000組の双子リストを基に調査してきた。老年病予防で双子を調査する理由について「遺伝子が100%同じ一卵性双生児と平均で50%同じ遺伝子を持つ二卵性を比べ、血圧や血中コレステロール濃度などの差に、どれくらい遺伝子が関係しているのかを探ることができる」と説明する。また、一卵性ペアを比較することで、環境の影響を見ることもできる。全く同じ遺伝子を持つ2人でも、職業や生活習慣が違うと、健康状態に差が出るという訳だ。
 双子の寿命差は平均7~8年あり、早川さんが調査した中では20年違ったケースもあった。また、年齢を重ねるにつれ容貌に差が出ることもある。「ある70代女性の一卵性双生児の場合、見た目はまるで他人で、双子と思えないほど全く違っていた」という。遺伝も環境も違う一般の人と違い、双子の人生歴や生活環境を比較し、その差異を研究することは、さまざまな病気の予防を知るのに役立つのだ。
 ここで1つ疑問がわいた。寿命や病気などはあらかじめ遺伝子で決まっているのではないか? 早川さんはそういった遺伝子万能論を否定する。「例えば同じがん遺伝子を持つ2人でも、遺伝子の発現、つまり遺伝子が働くのか眠ったままでいるのかは環境にコントロールされている」と語る。これは双子の研究でわかったことで、赤ちゃんの双子と中高年の双子を比べたところ、赤ちゃんの双子は遺伝子の発現はほぼ同じなのに対し、中高年の場合はかなりの差が出たという。遺伝子の働きに生活環境が影響していることがわかる。
 では、寿命に1番影響を与えるのは何だろうか? 早川さんは「配偶者」と即答した。「配偶者こそ最大の環境要因じゃないですか。お互いの性格が合う、合わないかはとても大きな問題。だから私は若い人に、相手の容姿や経済力にこだわるのではなく、長生きできる人と結婚しなさい、と言っているんですよ」と笑う。
 ちなみに早川さんの妻は双子。大学院を修了し、研究所へ入った26歳の時、教授から「君は何を研究するんだ?」と聞かれた。思わず「じゃあ双子の研究を」と答えて以来、30年以上に渡り双子の研究を続けている。妻の環境要因が大きかったようだ。(早川方子)

更新日時 2013/08/06


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