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阪大の先生㉑久角喜徳さん エクセルギーの考え方

研究室のある阪大吹田キャンパスへは、茨木市の自宅から自転車で通っている。「木津や嵐山、大阪の南港くらいまではサイクリングで行きますよ」

 日本はエネルギー資源の乏しい国だ。それゆえ、エネルギーを効率的に利用するために、さまざまな技術開発が行われてきた。大阪大学大学院工学研究科特任教授の久角(ひさずみ)喜徳さんは、以前勤めていた大阪ガスと共に、「エクセルギー」という考え方で、より無駄のないエネルギーの利用技術を開発している。
 エクセルギーという単語を、初めて耳にする人も多いだろう。簡単に言えば、電力や動力と等価な利用可能なエネルギー量のことだ。エネルギーの発熱量を給料で例えると、手取り額が有効な熱量となる。しかし、手取り額がすべて自由に使えるわけではないのと同じく、有効熱量もすべてが利用できるわけではない。家賃や光熱費といった必要経費を除いた自由に使える“お小遣い”が、エネルギーシステムでは有効エクセルギーに相当する。目に見えない伝熱や燃焼などの損失(無効エクセルギ-)が、必要経費に例えられる。
 久角さんは1973年に大阪大学工学部を卒業後、大阪ガスに入社。直後に第1次石油ショックが起き、省エネの気運が高まった。そうした中でLNG(液化天然ガス)冷熱発電施設の設計から建設、試運転までを任され、世界初の商業プラントを開発した。以降も新技術を導入した多くのプラント建設に携わり、エクセルギーによる設計の大切さにたどり着いた。
 エクセルギーは、大規模プラントだけに考慮されるものではない。大阪ガスエネルギー技術研究所在籍中の10年前に取り組んだのが、集合住宅のコージェネシステム(排熱を利用した高効率エネルギーシステム)、その名も「隣組コージェネ」だ。
 「発電効率の高いコージェネシステムは、個人で利用するにはコストが高く、稼働率も悪い。それを自治会やマンションの管理組合で共同運用すれば、問題は解決する。余剰電力を売るようにすれば省エネ意識も高まる」と、久角さんは語る。さらに、「希薄になった隣近所との関係性が省エネを軸に復活し、地域連携が図れるようになる」と強調する。
 久角さんが理想的な社会として挙げるのは、江戸時代の暮らしだ。「いわゆる5Rの社会。Reuse(物の再使用)、Recycle(資源の再利用)、Reduce(資源使用量の削減)、Rental(物の貸し借り)、Repair(修理しての長期利用)が、エクセルギーを踏まえたシステムが一般化することで、可能になってくる」という。
 しかし、まだまだエクセルギーの考え方は浸透していないのが現状だ。「そこは3Cスピリット、Change、Challenge、Create で頑張りたい」と力強い笑みで見せた。(礒野健一)

更新日時 2013/06/13


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