空間を主役にした店づくり カフェ・アタ
池田市・石橋商店街西側の小さな川沿いの路地に「カフェ・アタ」がある。築30年ほどの5棟が連なった長屋の1棟を改装し、田中隆夫さんが2005年8月にオープンさせた。1階はカフェで、2階がギャラリーになっている。店名は親指と中指とを広げた長さを表す「咫(あた)」から名付けた。
田中さんは、家具デザイナーだった。子どものころから工作や図工などが大好きだったという。大学でデザインを学び、モノづくりの道へ進んだ。椅子、テーブル、収納庫、棚などオフィスや家庭用の家具をデザインしてきた。
店には自身がデザインしたカウンターや釣り棚などを配した。天井を高くし、空間が主役になる店にしたと田中さん。「空間が自分とお客さんのつながりを心地良くする。料理や会話を楽しませてくれる」。思いを込めて作った空間は「自分の中にいるようで、落ち着く」と言い、「週1~2度、80歳のおばあちゃんが店に来てくれる。ワインセット(料理3品とグラスワイン)を注文し、空間を楽しむかのように過ごしてくれる」とうれしそうだった。
田中さんは、料理とデザインには共通点があると言う。「自分だったらどうするかを、頭で組み立て、作りあげるところが似ている」と説明する。店を始めたきっかけを、「趣味だった料理を本格的に作ってみたいと思ったから」と照れ臭そうに話すが、妻の明美さんは「主人はコミュニケーションが苦手。克服するための場でもある」と本音をのぞかせる。
メニューは自家製調味料を使ったナシゴレン(850円)や田中さんが得意とするタイカレー(850円)、タイ風角煮丼(850円)などがある。金、土曜は夜も営業する。ギャラリーは月1回のペースで、若い作家を紹介する展覧会を開く。(進藤郁美)
更新日時 2012/04/11