マチゴト地域健康フォーラム 「夫源病」 夫婦で考える更年期障害~妻の不調は夫が原因?~
ホルモンバランスの崩れが原因とされる更年期障害だが、その症状を悪化させたり、長引かせたりする要因は、夫婦間のちょっとした会話や、態度にあるという。どんな言葉や態度がそうさせてしまうのか。逆に、どんな夫婦の関係を築けば症状が改善するのか。
マチゴトは、大阪樟蔭女子大学教授の石蔵文信さんを講師に招き、地域健康フォーラム「『夫源病』 夫婦で考える更年期障害」を、3月2日午前10時から、とよなか男女共同参画推進センター・すてっぷホール(豊中市玉井町1)で開催する。=フォーラムは実施ずみ(礒野健一)
◇定年後の夫は、妻のストレスに?
更年期障害は、主に閉経後の女性が、ホルモンバランスの崩れによって体に不調を来す状態を指す。症状には個人差があるが、自律神経失調症のような状態や、頭痛、発熱、動悸(き)、めまい、肩こりなどが表れる。また、精神的に不安定となり、イライラや抑うつ気分が出る場合も少なくない。
女性特有のものではなく、男性にもストレスによる更年期のような症状はあるが、仕事が忙しいと我慢したり、弱音を吐くことをしないので、表立って訴えることが少ない。そのため、妻が更年期障害によって体調不良を訴えても、夫は「放っておけばそのうち治る」と軽く流し、ぞんざいな言葉や態度になってしまいがちだ。石蔵さんは「それがストレスとなって症状を悪化させ、期間の長期化につながっている」と話す。
それでも、夫が仕事をしている間は、まだストレスも少ない。しかし定年退職を迎え、四六時中顔を合わせるとなると、そうもいかなくなる。仕事一筋でやって来た夫ほど、定年後の時間の使い方を知らず、妻の行くところにどこでも付いていく「濡(ぬ)れ落ち葉」となってしまうからだ。男性に職場という環境があったのと同じく、女性にも近所付き合いや趣味の仲間という個別の環境が生まれている。石蔵さんは、「『亭主元気で留守がいい』というのは、妻にとって理想の環境。せっかくできたその環境に、定年を迎えた夫が入り込むのはストレスでしかない」と注意する。
◇「昼食うつ」を解消する方法
定年後の夫を持つ妻がかかりやすい症状に「昼食うつ」というものがある。朝食を出した後、何をするでもなく家でゴロゴロする夫が、11時ごろになると「今日の昼飯はなんだ?」と催促し始め、正午には何の用意もできていないのに食卓に座って、プレッシャーをかけてくるのだ。昼食後も同じように、「今日の夜は何を作るんだ?」と尋ね、妻がそのための買い物に出かけようとすると、「俺も行く」と濡れ落ち葉。それが毎日続くことで、うつ状態になるという。
それを解消し、熟年夫婦の円満を促すために石蔵さんが提案しているのが、「夫が昼ごはんを自分で作る」ことだ。とはいえ、男がたまに料理をすると、妙に食材にこだわったり、そのくせ片付けはしなかったりと、結局、妻に負担をかけることも多い。「だから、土鍋1つ、調味料1つを使って、15分で作る“ええ加減料理”がベスト。その割にはおいしいよ」と、自信を見せる。吹田市などで定期的に料理教室も開いており、今ではその生徒が別の街で“ええ加減料理”を教え、円満な熟年夫婦を増やしている。
また、祖父が孫の面倒を見る「じじ育」も推奨する。「共働きが増え、男性も女性も子育てに忙しい30代は、仕事も1番忙しく楽しい時期。そこを手伝ってあげれば、濡れ落ち葉にもならず一石二鳥」。石蔵さん自身も、毎日ではないものの、保育園へ孫の送迎をする。
フォーラムでは、医学的な見地だけでなく、夫婦の問題として更年期障害について考える。現在悩んでいる人も、今後に不安を抱く人も、気軽に参加してみてはどうだろうか。
【石蔵文信・大阪樟蔭女子大学教授】
三重大学医学部卒業。大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長などを経て、大阪大学大学院医学系研究科准教授。2013年4月から、大阪樟蔭女子大学学芸学部健康栄養学科教授。10年間、約600人の男性更年期外来の経験から、2011年の著作「夫源病 こんなアタシに誰がした」で、女性の更年期障害の大きな原因は夫の対応にあると指摘し、反響を呼ぶ。その解決策の1つとして、定年後の男性が1人で簡単に作れる「男の料理講座」も開講。石蔵さん自身も、大学での昼食は研究室で1人鍋を作っている(写真)。
現在は大阪樟蔭女子大学で教鞭をとるほか、全国各地への講演活動や、自転車ペダルこぎ発電によって、節電と地域活性化を目指す「日本原始力発電協会」の活動などを、精力的に行っている。
=地域密着新聞「マチゴト豊中・池田」第60号(2014年2月13日)
更新日時 2014/02/13