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関西で唯一、吃音のメンタル法治療 10月19日、 すてっぷで地域健康フォーラム

圓越広嗣さん

 話す時に言葉が連続して発せられない吃音(きつおん)は、幼児の5%、成人の1%に見られるという。悩む人が多い割には、治療の専門家が少ないのが現状だ。
 マチゴトは10月19日、医療法人篤友会坂本病院分院(豊中市庄内東町3)、言語聴覚士の圓越(えんのこし)広嗣さんを招き、吃音をテーマとした医療フォーラムを開く。言語聴覚士は、言葉、聞こえ、食事の飲み込みに問題がある人に、機能維持・改善のため助言や訓練を行う専門職だ。圓越さんは、吃音の画期的な治療法と言われる「吃音年表のメンタルリハーサル法(メンタル法)」を確立した目白大学保健医療学部言語聴覚学科の都筑澄夫教授から直接指導を受けた言語聴覚士の1人。フォーラムは10月19日(土)午前10時から、豊中市玉井町1、とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」で開く。(早川方子)

◇声を出さずに行う訓練
 吃音患者への治療は、声や音の出し方をトレーニングする「発話訓練」が主だ。それに対して、メンタル法は口や舌の使い方を工夫するのではなく、むしろ声を出さず、頭の中のイメージによって訓練するという方法だ。圓越さんは「吃音患者は自信がなく、感情がうまく表現できないケースが多い。そのため、過去の人間関係や家庭生活などを振り返り、否定的な感情を取り除くことから始めます」と話す。これまでの臨床試験で74%が、治るかそれに準じた状態になっているという。

◇吃音の進行段階
 吃音は4つの段階を追って進行していく。まず、「ぼ、ぼ、ぼく」のように音節の繰り返しなどが見られる第1層▽言葉がつかえて出てこない「ブロック」症状が出始める第2層▽吃音を隠して話すテクニックを身につける第3層▽話すことを避け始める第4層だ。
 第1層は症状が出ていても、本人に自覚がない段階。第2層になると自覚はあるが、「辛い」とか「恥ずかしい」という気持ちはないので、本人はそれほど気にせず話すことができる。
 圓越さんによると、問題は第3層以降だ。「第3層に行くと、本人も十分に自覚しているため苦悩も大きい。しかもテクニックを身につけていくため、表面的な症状はむしろ減る」という。例えば、圓越さんの患者に「おはよう」という言葉が出てこない男性がいた。彼は「おはよう」を避けるため、たとえ早朝でも「こんにちは」とあいさつしていた。しかし、こうしたテクニックを使っても吃音が隠せなくなると、会話自体を避けるため、人と会うことすら止めてしまう。それが第4層だ。

◇自然な会話を目指して
 メンタル法では、第1・第2層の患者がスラスラ話せるように、そして第3・第4層の患者は最低でも第2層に引き戻すことを目標としている。つまり、意識せずに会話できるようにするわけだ。圓越さんは「吃音患者はいわゆる"空気が読める"優等生タイプに多い」と言う。子どもに吃音症状が出た時、親が「ゆっくり話してごらん」や「落ち着いて、もう1度言ってごらん」と言うと、それは第3層の「話すテクニック」を覚えるきっかけとなり、子どもにとって逆効果となる。圓越さんは「第1・第2層の場合は自然に治癒する可能性もある。周囲が間違った対応をして進行を早めないように」と注意を促している。

◇圓越広嗣・坂本病院分院 言語聴覚士
公立豊岡病院の耳鼻咽喉(いんこう)科に
 勤務していた2008年9月、重度(第4層)の吃音に悩む20代の男性患者から相談を受け、2009年2月に都築教授からメンタル法を指導してもらい、同年4月から男性患者の訓練を開始した。男性患者は吃音症状がほぼ治ったため、現在は通院していない。2012年4月に坂本病院へ。毎週火曜日に坂本診療所(豊中市庄内東町2)に出向き、幼稚園児から40代の吃音患者9人の治療を受け持っている。メンタル法を行っている施設は全国に8カ所しかなく(2012年3月現在)、関西では坂本診療所だけ。

◇募集要項
【主催】 毎日新聞ローカル
【日時】 10月19日(土)午前10時 ~11時30分 (9時30分から受け付け)
【受講料】 無料(要申し込み) 
【定員】 20人(先着順)
【会場】 豊中市玉井町1-1-1、とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ
    (阪急豊中駅直結、エトレとよなか5階)
【申し込み方法】①名前②年齢③性別④住所⑤電話番号⑥吃音に関する質問があれば明記し、ファクス(06-6346-8256)か、はがき(〒530-8251 大阪市北区梅田3-4-5 毎日新聞ローカル「マチゴト編集部」)、またはメール(info-toyonakaikeda@machigoto.jp)で申し込みを。電話(06-6346-8255=平日の昼間)でも受け付けます。

更新日時 2013/09/16


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