このエントリーをはてなブックマークに追加

腹腔鏡手術のフロンティア ~優しく美しく安全な最新治療法~

国立大阪病院を経て、大阪大学大学院医学系研究科へ。趣味はジャズ鑑賞と探検旅行。学生時代は1カ月かけてヒッチハイクをしながらアフリカを横断した。多忙な現在、旅行する時間は取れないが、海外出張の際には「ジッとしていられない」と、時間が許す限りホテルを出て各地へ足をのばしている。

◇9月1日、 すてっぷで地域健康フォーラム

 日本人の2人に1人ががんになるといわれている。中でも大腸がんなど消化器系のがんは、がん全体の5割を超え、いまや身近な病気となった。一方で、医療や新薬の開発は近年目覚ましい進歩を遂げており、完治する可能性が高まっただけでなく、痛みも少なく傷も目立たない手術方法も登場した。
 マチゴトは9月1日、大阪大学大学院消化器外科学内講師の竹政伊知朗さんを招き、大腸がんをテーマとした地域健康フォーラムを開く。竹政さんは傷が少ない大腸がん手術、腹腔(ふくくう)鏡手術の、その中でもさらに傷が目立たない「単孔(たんこう)式」の名医として国内外で知られている。フォーラムでは最先端の大腸がん治療について話してもらう。フォーラムは9月1日(日)午前10時から、豊中市玉井町1、とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」で開く。(早川方子)

◇竹政伊知朗・大阪大学大学院消化器外科学内講師
◆右肩上がりの腹腔鏡治療
 大腸がんの外科手術には、大きくお腹を切る開腹手術と、お腹に数カ所穴をあけて、そこから腹腔鏡と
いうカメラや専用のメスなどの器具を入れてがんを切除する腹腔鏡手術がある。大腸の腹腔鏡手術は1991年に世界で初めて実施され、94年には日本で早い段階で阪大病院に導入された。
 腹腔鏡手術は傷が非常に小さく術後の痛みが軽いことが最大の利点だが、当初は良性疾患や虫垂炎などへの適用に限られていた。竹政さんも「がんの場合は傷が小さいとか痛くないよりも、いかにきっちりと安全にがんを取るかが大事で、むしろ大きく切って確実にがんを取るという考えが主流だった」と振り返る。しかし患者の満足度の高さに加え、治療効果も開腹に劣らないことが分かるにつれ、徐々にがん治療に適用されるようになった。現在、阪大病院における大腸がん手術の95%以上は腹腔鏡によるという。

◆見た目も美しく安全
 通常の腹腔鏡手術は、お腹に5カ所の穴をあけるが、最近登場したのが穴を1つしかあけない「単孔式」という方法だ。おへそのあたりにあけた穴から、カメラと2本の器具を入れて手術をする。痛みはより軽く、手術後の見た目も美しい。大腸がんの単孔式手術は日本で初めて阪大病院の竹政さんのチームが実施し、2009年には、大腸がんを治す標準的な手術で
あるリンパ節郭清(かくせい)に、単孔式手術で世界で初めて成功した。「単孔式は開腹手術に引けを取らない。むしろよりきれいな手術ができる」と竹政さんは話す。高性能のカメラとフルハイビジョンシステムを優れた術者が使うと、肉眼での開腹手術では見えない臓器を包む膜構造や微細な神経まで見える。その結果、神経を損傷して排便、排尿、性機能などに障害を起こすリスクも下げられる。
 竹政さんは「術者の技術を上げるのが大変ですが、患者さんの負担、手術のクオリティーとも高い腹腔鏡手術はいずれがん治療の主流になるでしょう」と言う。一方で「それでも手術だけでがんは治療できない。抗がん剤や臨床も含めた基礎的研究をどう組み合わせるか。手術でがんを切除した後の、残すべき機能、美しい体、痛みのない治療をこれからも追究していきたい」と話している。

◆竹政伊知朗さん
 国立大阪病院を経て、大阪大学大学院医学系研究科へ。趣味はジャズ鑑賞と探検旅行。学生時代は1カ月かけてヒッチハイクをしながらアフリカを横断した。多忙な現在、旅行する時間は取れないが、海外出張の際には「ジッとしていられない」と、時間が許す限りホテルを出て各地へ足をのばしている。

【主催】 毎日新聞ローカル、毎日新聞社
【日時】 9月1日(日)午前10時 ~11時30分 (午前9時30分から受け付け)
【受講料】 無料(要申し込み) 【定員】 25人(先着順)
【会場】 豊中市玉井町1-1-1、とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ
    (阪急豊中駅直結、エトレとよなか5階)
【申し込み方法】 ①名前②年齢③性別④住所⑤電話番号⑥がんに関する質問を明記し、ファクス(06-6346-8256)か、はがき(〒530-8251 大阪市北区梅田3-4-5 毎日新聞ローカル「マチゴト編集部」)、またはメール(info-toyonakaikeda@machigoto.jp)で申し込みを。電話(06-6346-8255=平日の昼間)でも受け付けます。

更新日時 2013/08/08


関連地図情報

関連リンク