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白血病って怖い?~「不治の病」をのりこえた血液がん治療のいま

小杉智・市立豊中病院内科部長

 マチゴトは、専門医を囲んで健康に関する理解を深める「地域健康フォーラム」を毎月開いている。これまで大腸がん、胃がん、乳がんなどを取り上げてきた。7月は新たに市立豊中病院内科部長で血液内科が専門の、小杉智さんを講師に招き、白血病やリンパ腫などの「血液がん」をテーマに講演を行う。かつては文字通りの「死の病」だった血液がんは、近年、新しい薬や治療法の開発で、治療成績は劇的に改善されている。小杉さんには一般にはあまり知られていない血液がんの基礎知識から最新情報まで、幅広く語って頂く。
 フォーラムは7月21日(日)午前10時から、豊中市玉井町1、とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」で開く。(早川方子)

◇講師は小杉智・市立豊中病院内科部長
◇いまや「不治の病」ではない

 私たちの血液には酸素を運ぶ赤血球、免疫に関わる白血球、出血を止める血小板という血液細胞が含まれる。これら血液細胞は、骨の中の骨髄にある造血幹細胞から作られるが、そのプロセスでがん化が起きると血液がんとなる。どの細胞が、いつがん化するかによって細かく種類が分かれるが、おおむね白血病、リンパ腫(しゅ)、骨髄腫の3つに分けられる。
 大腸がんや胃がん、肝臓がんなどの「固形がん」との違いは、基本的にがん細胞が固まりを作らないこと。なので原則として手術で取り除くのではなく抗がん剤治療(化学療法)が治療法の主力となる。
 血液がんの中でも、多くの人がその名を聞いたことがあるだろう白血病。そのイメージは「発症したらかかったら数カ月で死亡」「入院中は無菌室から出られない」というものではないだろうか。映画化されたベストセラー小説「世界の中心で、愛をさけぶ」のヒロインは白血病で発症から約2カ月で亡くなってしまった。小説の舞台は80年代後半。小杉さんは「当時は現実も映画と同じような状況でした」と話す。かつて白血病はほぼ「不治の病」だったわけだ。
 しかしそれ以後、血液がんに対する画期的な新薬、治療法が次々と開発された。結果、治療成績は「飛躍的に改善した」という。例えば慢性骨髄性白血病という病気は現在、糖尿病を合併した高脂血症患者と同じくらいの生存率(8年後の生存率が約8割)になっている。

 ◇外来治療も可能に
 もう一つ、患者や家族にとっての大きな変化は、長期間の入院ではなく外来での抗がん剤治療が主流になったこと。G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤という新しい薬によって、免疫を担う白血球の一種、好中球の機能を高めることができるようになり、抗がん剤治療で免疫機能が落ちるのを防ぐことが可能になった。以前は強い抗がん剤を使っている間は免疫機能が落ち、単なる風邪でも命取りになる危険があるので無菌室での入院が前提だった。今では、急性白血病などを除き、自宅での生活を続けられることが多くなっている。

 ◇治療は患者と医師の二人三脚
 血液がんにかかる人の数は胃がんの約4分の1だ。しかし他の多くのがんと違い、食生活や運動不足、喫煙などの生活習慣は発症とは無関係で、予防する方法がない。小杉さんは「逆に言えば、どんな人にも起こりうる病気」と話す。また、進化したとはいえ抗がん剤治療では、免疫低下による感染症の危険や吐き気、貧血などの辛い症状が伴うのは今も避けられない。「患者さん自身がきちんと薬を飲まないと治療は成立しません。血液がん治療は患者さんと医師の共同作業なんです」。最新の医療は不治の病を克服しつつある。「辛いこともありますが、希望は確実にあるということを多くの人に伝えたいですね」と小杉さんは話している。

 ◇プロフィール
大阪大学医学部卒。京都市内の進学校に通っていたため、医学部進学は珍しくなく、「周囲に流される形で医師になった」という。研修医時代にG-CSF製剤が開発され、血液がんに希望を見出し、血液内科の専門医になった。「患者さんたちが僕を医者にしてくれた。患者さんにお返しをしたい」。プライベートでは1男1女の父親。

◆応募要項
【主催】 毎日新聞ローカル、毎日新聞社
【日時】 7月21日(日)午前10時 ~11時30分 (午前9時30分から受け付け)
【受講料】 無料(要申し込み) 【定員】 30人(先着順)
【会場】 豊中市玉井町1-1-1、とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ
    (阪急豊中駅直結、エトレとよなか5階)
【申し込み方法】 ①名前②年齢③性別④住所⑤電話番号⑥がんに関する質問を明記し、ファクス(06-6346-8256)か、はがき(〒530-8251 大阪市北区梅田3-4-5 毎日新聞ローカル「マチゴト編集部」)、またはメール(info-toyonakaikeda@machigoto.jp)で申し込みを。電話(06-6346-8255=平日の昼間)でも受け付けます。

更新日時 2013/07/09


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