いつまでも動く体に⑤ 南谷クリニック・南谷哲司副院長
南谷さんは50歳を過ぎた今も毎年、サッカーの大学OB戦に出場する。1カ月前から体作りをして備え、「徐々に体にキレが戻るのが楽しい」と言うが、試合が終わるとトレーニングをサボるため、すぐに元に戻ってしまうらしい
「肩や腰、ひざなどの痛みを訴える人に話を聞くと、そのほとんどが運動不足。普段の生活の中に、ちょっとした運動を取り入れるヒントを与え、継続させていくのが私たちの役割」と話すのは、豊中市岡町北の医療法人南谷継風会「南谷クリニック」の南谷哲司副院長だ。これまでの連載では、クリニックに併設するメディカルフィットネス・エムズのスタッフによる具体的なストレッチを紹介してきたが、今回は運動をすることの意義と、それをどう続けていくかについて、改めて聞いてみた。
体は使わなければ衰える一方だ。しかし、命に関わるものではないため、危機感をもって運動を始め、それを継続していくのは難しい。だからこそ、いつでもどこでも気軽にできる運動を、南谷さんは提案する。
その1つが「おなかへこまし運動」だ。大きく息を吸い込んで腹をふくらませ、次は吸った息を吐き出しながら腹をへこませる。約30秒間、その状態を保つ。これで腹横筋(ふくおうきん)が鍛えられ、腰の痛みがやわらぐという。もう1つ推奨するのが、「フラミンゴ立ち」だ。椅子や机につかまり、片足を軽く上げた姿勢を30秒間保つ運動だ。左右交互に3回ほど繰り返す。これで太ももの内側の筋肉が鍛えられ、歩く姿勢が正しくなり、関節にかかっていた負担が軽減する。
南谷さんは、運動を続けるのに大事な要素として、「人の目」を挙げる。「一流のアスリートでも、自己管理を徹底し、1人黙々とトレーニングを続けるのは難しい。衆目の中でやることで、頑張っている自分を自覚できるし、継続できる。クリニックやエムズに通う人にも、機会がある度に『体、動かしてますか?』と尋ねる。プレッシャーではないけれど、しつこく言っていかないと、自分の意志だけでは継続するのは難しいから」と語る。
クリニックには「思いつきノート」というものが置かれている。スタッフがふと気がついたこと、思いついたアイデアを、すぐに書き留めるものだ。「患者が訴えるまま、痛みを取り除く治療をしたり、薬を出したりするだけの受動的な診療はしたくない。どうすれば痛みが再発しないか、そうするために適切な運動は何かというアイデアを提案する、能動的な治療が大切。それに繋がるアイデアは、ふとした瞬間に生まれることも多い」という。南谷さんの胸ポケットにも、より良い治療を目指すためのメモが、常に詰まっている。(礒野健一)
【南谷クリニック メディカルフィットネス・エムズ】豊中市岡町北1-2-4▽06-6841-5720▽http://www.minamitani-c.or.jp/
更新日時 2013/04/11