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阪大の先生⑥伊東信宏さん 音楽を学問する

専門は中央ヨーロッパの民族音楽。「運動会で聴くような、親しみやすい曲」

 大阪大学大学院文学研究科の伊東信宏教授の専攻は音楽学だ。演奏ではなく、音楽の歴史や楽器の成り立ちなどを研究している。

学生時代はバイオリン奏者で、阪大オーケストラに所属していた。当時は佐渡裕さんが練習指揮を担当していたという。「プロでやれるほどではなかったが、音楽に携わりたかった」と研究者を目指した。「当時は『音楽は芸術であり感性のもので、文字にして分析するものではない』という風潮が強く、こうした研究はタブーだった。今も消えてないけど、言葉にすることで味わいが変わることもある。ワインだって、ソムリエのうんちくを聞いて飲めば楽しいでしょう」

 音楽の多様な楽しみ方を知ってもらいたいと、さまざまな企画をプロデュースする。「ピアノはいつピアノになったのか?」と題し、約300年の歴史を持つピアノの変遷を、当時のピアノによる演奏を交えて伝えたレクチャーコンサートは、全8回が満席の盛況だった。今は映画音楽を題材にした企画が進行中だ。

 産学連携にも積極的だ。2011年12月からは、音響機器メーカーの富士通テン(神戸市兵庫区)とタイアップし、録音・編集技術について講座を開催した。スタジオを訪ねた際は、学生と一緒に身を乗り出してプロの技に見入った。

 デジタル化が進んで音楽は身近になった。しかし、それはいいことばかりではない。「いつでも聴けるから、じっくり鑑賞しなくなった。CDを買ってきても、データを取り込むと目当ての曲ばかり聴いて、アルバムの中の隠れた名曲を見つけられない」と嘆く。「最近の子はビールを飲まない。初めは苦いからね。それが『うまい』と思えるまで吟味しないのはもったいない。音楽も同じですよ」。だから伊東さんは、音楽を楽しむ入り口をこれからも作り続ける。(礒野健一)

伊東信宏 大阪大学

更新日時 2012/03/21


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