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阪大の先生①西川勝さん 医療現場の哲学

 “入れ歯カフェ”が開かれると聞いて、10月に京阪なにわ橋駅構内のアートエリアB1を訪れた。正しくは「入れ歯」について考える会で、「歯科技工所の仕事」を一緒に考えるというもの。仕事帰りや通りすがりの人、歯科衛生士、歯科医ら約20人が参加した。
 会は大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)の特任教授の西川勝さんが開いた。「1つの正しい答えを見つけようとするのではなく、自由に考え、みんなで意見を出し合う」のだという。
 西川さんは看護師で、臨床哲学が専攻だ。臨床哲学は医療や介護、教育や貧困など、社会で生じているさまざまな問題を、市民との対話のなかで考えていく。阪神大震災を機に、阪大の前総長、鷲田清一さんが提唱した。
 臨床哲学について西川さんは、「聞く哲学」と説明する。精神科や人工血液透析看護、高齢者介護の現場にいて、「食事を持っていくとニコニコ喜んでいた患者が、数時間後に首をくくっていた」などの経験を挙げ、「人が生きる意味や生き方などは、いくら考えても答えが出なかった」と話す。しかし、「人の生死にかかわるには哲学が必要」だと強調する。そう話す西川さんは、「本だけ読んでもあかん。『わからん』と言いながら出掛けて行って、いろんな人の話を聞く。聞かないと人を知ることはできない。つまり自分を知ることも」と哲学的に語った。
 センターは2005年、市民の考えていること、感じていることに専門家が耳を傾け、相互理解のできる人材を育てる目的で開設された。西川さんらセンターのメンバーは「ラボカフェ」という名称で、哲学、医療、科学、アートなどさまざまなテーマに沿った対話イベントを定期的に開いている。
(進藤郁美)
=地域密着ウェブ「マチゴト豊中・池田ニュース」第32号(2011年11月3日)

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 西川勝 臨床哲学 鷲田清一 ラボカフェ 京阪なにわ橋駅 アートエリアB1 大阪大学

更新日時 2011/11/02


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