編集長のズボラ料理(805) ジャガイモと鶏肉のチーズ蒸し焼き
食材同士をくっつけるのは、定年後クッカーの僕にとっては、とても難易度が高い。それを思い知らされたのは、かき揚げだった。
新聞記者現役の若いころ、先輩に連れられて酒を飲みに行った時のことだった。先輩が頼んだ料理は1つだけ。それがかき揚げだった。分厚いかき揚げだった。その印象が強く、それ以来、かき揚げは憧れの料理になった。
もう1つ憧れたのは、1つだけ注文する先輩の粋さだった。これはなかなかできない。つい、いくつかを注文してしまう。見栄があるから1つの注文には恥ずかしさがあるからだ。ただし、安い店に限る。
その先輩が定年後、会社に来たことがある。ある女性に土産を持参した。チョコレート2粒。これも僕にはまねができない数だが、チョコはゴディバだったので、数の少なさが粋だった。
料理を始めて、天ぷらは難しいと知った。パリッ、サクッとした歯ざわりに揚がらないのだ。ベチャ、クタッとなってしまう。
かき揚げになると、絶望的と言ってよい。具材がうまくくっつかない。接着剤の小麦粉を多くして水を少なくして衣にすれば、固めることは成功するが、小麦粉だんごになってしまう。どうしよう。
そんな時に、1つだけのかき揚げを思い出す。大阪市・淀屋橋近くの店だった。座敷だったから、高そうげな印象だった。サッと飲んで店を出て、それも粋だと思ったが、今思えば、あまり飲み食いすると料金が高くなるからだったのかもしれない、
遍路仲間に料理名人のベテラン主婦がいて、天ぷらのテクニックを教えてくれた、油の量を少なくするのだという。なーるほど、である。箸で具をつかんで油に入れると、鍋の底に箸の先や具がつくので、具が油の中で泳ぐことなく、固め易いではないか。
食材をくっつける難しさは、かき揚げだけではない。先日も失敗してしまった。
高血圧の薬をもらうため、1か月半に1度、自宅近くの町医者に行く。待ち合い室に雑誌「オレンジページ」置いてあり、そこに紹介されていたジャガイモと鶏肉のチーズ蒸し焼きが載っていた。僕の医者通いの最大の目的はオレンジページだから、レシピを忘れないうちにと、作ってみた。オレンジをズボラ流にアレンジして。
ジャガイモは皮をむき、1センチ弱のさいころ状に切る。鶏肉も同じような大きさに切る。2つを皿に乗せ、ラップをかけてレンジにかけ、火を通す。ボールに入れ、コショウ、クレージーペッパー、粉チーズ、カタクリ粉と水少々を加えてよく混ぜ、円盤状に成形する。フライパンに多めの油をひき、両面を焼いてから、酒をふってふたをして蒸し焼きにする。
これで、うまくいったかというと、接着不足で、いくつかの円盤は壊れてしまった。カタクリ粉が少なかったのか。それともレシピを間違えて覚えていたのか。わからない時の処方箋は医者に行くこと。オレンジページの掲載号が残っていることを期待して。(梶川伸)2025.06.10
更新日時 2025/06/10