能勢街道をゆく⑯ 水月公園~辻ケ池公園
池田市の水月公園から、歩き継いでいく。公園の前に能勢街道の案内板がある。石柱も立っているが、道が交差しているので分かりにくい。思案顔で石柱をながめていると、2人連れの女性が声をかけてくれ、能勢街道を教えてくれた。「街道を歩いていると勉強になりますね」と言い、最後に「お気をつけて」で送ってくれた。
少し行くと、右手に簡単な堂があり、宝篋印塔(ほうきょういんとう)や石仏群が納められていた。さらに行くと、右手に石段が見える。石碑があり、愛宕大権現(あたごだいごんげん)と記され、「往時、火災が多く、村民相諮(あいはか)り、その除災を期する為、京都愛宕山より勧請(かんじょう)し……」と説明されていた。石段を上っていく。途中で木の鳥居をくぐる。全部で67段。登りきった所に、小さな社があった。
先に進むと、すぐに釈迦院の前に出る。「尊鉢厄神(そんぱちやくじん)」として親しまれている寺だ。サツキの刈り込み、アジサイが境内を飾っていた。
ここから街道をそれて、鉢塚古墳を訪ねてみる。資料によると、6世紀終わりごろの古墳で、奈良県明日香村の石舞台古墳に匹敵する巨大な石室を持つと書かれているからだ。高さ5.2メートは、大阪府内では1番、全国でも5本の指に入るといる。
しかし、道が分かりにくい。通りかかった女性に聞いた。親切な人だった。しばらく考え、「神社の裏がそうだと思う」と言って、わざわざ案内してくれるという。恐縮すると、「散歩中ですから」と言って、先に立つ。それでも自信がなかったのか、「ちょっと待っててくだい」と言い残して、小走りに先を急いだ。間もなく帰ってきて、「やっぱりそうでした」と話す。わざわざ先に確認をしてくれたのだった。
案内された所は五社神社だった。本殿の裏が古墳だという。「中で線香もあげられます」と話し、本殿に参ってから去って行った。神社の狛犬(こまいぬ)がいい。神社の建物の壁に「大阪狛犬の謎」と題した文章のコピーが張ってあった。「最も愛想がいい浪花狛犬が池田市鉢塚に鎮座する五社神社にいる」と書いてあった。もう1度戻って眺めてみる。丸い大きな目がクリクリして、首を少し右にかしげている。文章の通り、とても愛らしい狛犬だった。
古墳に行く。石室の入り口部分に入ることができる。女性に言われた通り、線香とロウソク立てがあった。線香に火をつけた後、目をこらして中を見た。上円下方墳で、石室は奥行き15メートルもある。玄室は7メートル。羨道(せんどう)は8メートル。玄室の高さ5メートル、幅4メートル。中には十三重石塔が見えた。神社の奥の院と位置づけられていた。
街道は大阪教育大学附属池田小学校のそばを通る。その日は6月8日で、8人が亡くなった悲惨な事件の日にあたっていたので、門の外から慰霊碑に手を合わせた。
産業技術総合研究所関西センターの前を通り、辻ケ池公園へ。落ち着いた家並みを見せる通りのそばに公園があり、案内板も立っていた。雨が降ってきたので、そこで街道歩きを終えた。距離は短かったが、人情に触れる街道歩きだった。(梶川伸)
更新日時 2011/06/14