寺の花ものがたり
色を落とした本堂を背景に、柔らかな色調の花が風に揺れる。優しい顔の石仏が一列に並んで、その穏やかな様を見ている。10万本の秋桜(こすもす)は、奈良の秋の風物詩...
ささやか山門をくぐると、小さな本堂がある。その横の、山の斜面にへばりついたようなスペースに、酔芙蓉(すいふよう)の道ができている。その数、1300本。背が高い...
棚田に稲が垂れている。オクラの黄色い花が咲き、ナスが濃い紫のつやを見せる。のどかな秋の道が行きついた所に、寺はある。 幅2メートルに満たない石段が待つ。や...
「寺にとっても、私にとっても、この寺の萩(はぎ)は特別な花。公園に育っている萩とは違う。死者に手向けるお供えの花なんです」。開口一番、副住職の村山博雅さんは言...
「古い寺は、昔からの風景を守っていかなならん」。前住職、小松智光さん(昨年=2003年=死去)の口癖だったと、寺の相談役である責任役員、川端亮一さんが言う。寺...
境内の芙蓉(ふよう)は、もう半世紀ほどになる。「先代の住職が植えた。檀家(だんか)からもらったのか、花が好きだったので植木市ででも買ってきたのか。それはよく分...
「寺とはどういう意味か分かりますか」。そんな問いから、住職の岡本昇禅さんの話は始まった。「人々が集い、楽しく語り合う場所を意味するサンスクリット語の『テーラー...
明智光秀の「首塚」の碑が境内に立っている。明智の家紋が桔梗(ききょう)だった。先代の住職、城光寺哲立さんが妻の美代子とともに境内で桔梗を育て、寺を盛り立ててき...
姥百合(うばゆり)とは、可愛そうな名をつけたものだ。 蓮(はす)のような葉が出て、茎が1本伸びる。葉が朽ちてきたころに、花が咲く。事典には、「花時にいたみ...
この寺に咲くムクゲは、龍潭寺白(りょうたんじしろ)と学名がついている。純白の5弁の花。普通のムクゲはラッパ状に咲く。龍潭寺白は花弁が90度まで開き、全体が平面...