寺の花ものがたり
土塀を持つ簡素な山門をくぐると、拝観の受け付けをする小さな建物があった。住職の石川重元さんは、その小屋にちょこんと座っていた。 境内はそれほど広くはない。...
明石海峡を見下ろす場所に、寺はあった。境内に白い小石を敷いた庭がある。岩が置かれ、それは淡路島にも見立て、周りに施された筋目は波と光を意味するとか。実物の淡路...
本堂から奥の院への道筋に、観音公園があった。すり鉢の底のような場所に背の高い観音像が立ち、四方の斜面を梅が覆う。シートを敷いて、宴を始めているグループもあった...
「見える範囲が寺域」。山に抱かれた寺だと説明しながら、住職の大原弘信さんさんは言った。「1000年かけて、山が選別してきた木々の緑を大切にし、木漏れ日が差す土...
水がぬるみ、瀬田川では、カヌーが水面を滑っていた。琵琶湖の対岸の山はまだ、雪をいただいている。そんな時期に、梅が山内を紅白に染め始める。 「山門を閉めると...
つつましい山門である。両脇には仁王ではなく、前だれをした小さな石仏が立っていた。参道は馬酔木(あしび)の並木。ちっちゃな白い花は、身を寄せ合うようにして房とな...
雪のある境内で、長靴姿の住職、濱中亮明さんは何度か立ち止まって言った。「どこに立っても体を1回転させれば、少なくても10本の山椿(やまつばき)が見える」。藪椿...
境内の小山は、室町時代の陰陽師(おんみょうじ)、安倍晴明が天文観測をしたという場所という。そこから見下ろすと、エトをモチーフにした巨大な絵馬が、地上に浮かび上...
冬は寒牡丹(かんぼたん)で知られる。36種300株ほどあり、毎年その半分ほどが1月中旬まで花をつける。 寒咲き菖蒲(あやめ)は、寒牡丹と重なり、そして入れ...
小さな山門まで、参道の水仙の淡い香りが導く。境内に入ると、所狭しと草木が覆い、縁取るように水仙の帯が続く。数は多い。 まず、匂(にお)い水仙が咲く。昨年の...