心にしみる一言(293) 葉にさきがけて咲き、最後は木にしがみつき、枯れてから風に吹かれて散っていく
◇一言◇
葉にさきがけて咲き、最後は木にしがみつき、枯れてから風に吹かれて散っていく
◇本文◇
京都市・嵯峨野の天竜寺の塔頭(たっちゅう)に三秀院がある。春は白い土塀の上に境内のサンシュユの木が見える。四方に細い枝を伸ばし、黄色の小花を集めて咲く。
住職の奥さんは花好きの人だった。結婚して寺に入ったが、すでにサンシュユの木はあったという。「住職と一緒に本堂を建て、庫裏を直し、子育てをし、忙しかったが、やっと花や木を見る余裕ができた」そうだが、「その間にサンシュユは立派になった」と話した。高さは4メートルほどある。
奥さんは境内の花を挙げていった。「春はサンシュユ、黄花ミツマタ、オニシバリ。その後、レンギョウ、マンサク」。サンシュユについては上記の言葉に続いた。「春一番に咲くので、楽しみ。葉にさきがけて。最後は木にしがみつき、枯れてから風に吹かれて散っていく」。
「オニシバリはジンチョウゲのようで、黄色の花をつける。ツツジの一種のセイカイハはピンクで糸のような花。ハンカチの木はハンカチを絞ってつるしたような葉をつける。カイドウは入学式のころに咲くので、子どもや孫がその前で写真を撮るのが恒例になった」。三秀院のサンシュユから始まった花の話は尽きることがなかった。(梶川伸)2021.03.12
更新日時 2021/03/12