心にしみる一言(298) 割りばしもどうぞ
◇一言◇
割りばしもどうぞ
◇本文◇
若者は遊び上手だ。そう思ったのは、吉永小百合主演「夢千代日記」の舞台となった兵庫県新温泉町の湯村温泉に、遊び仲間で行った時だった。
温泉が湧いている場所がある。そばの売店で、網の袋に入れた卵を売っている。それを湧いている温泉につけて、ゆで卵をつくる。これはよくあるお楽しみ。いい年をした仲間も、これくらいはやってみた。
そばに屋根のついた休憩所があり、ベンチに座ってできあがった卵を食べた。ふと見ると、若いカップルが卵のほかにも、温泉で熱して食べていた。トウモロコシ、イモ、そしてうどん。温泉での遊びに慣れている。発泡スチロールの皿と麺(めん)つゆまで用意していた。
なるほど、と思い、売店でソバを買った。それを卵が入っていた網に入れて、温泉でゆでた。ベンチに持って帰ったが、困ってしまった。どうして食べるか。
するとカップルが、発泡スチロールの皿を分けてくれた。麺つゆはついていたので、それをかけた。カップルがまた近寄り、「割りばしもどうぞ」。年寄りが見るには照れくさい仲良しぶり若者だったが、年寄りを気遣う素敵な大人に見えてきた。(梶川伸)=2021.03.30
更新日時 2021/03/30