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心にしみる一言(259) こんなに人が多くては踊れません

当時の風の盆のパンフレット

◇一言◇
 こんなに人が多くては踊れません

◇本文◇
 富山・八尾の盆踊り「風の盆」を見に行ったことがある。2002年の9月だった。18年も前のことだが、人の多さを覚えている。
 バブル経済が終わった後、経済は低迷した。そんな中で、旅行業界は好調だったように思う。私が先達(案内人)を務めた毎日新聞旅行の遍路旅は、昔ながらの遍路道はなるべく歩き、後はバス移動という変則的な遍路だったが、それでも参加者は多かった。1回目は2003年だった。
 大手の旅行会社もバス巡拝にドッと参入した。このため、札所の駐車場は、バスであふれかえった。歩き遍路やマイカー遍路も増えていた。実感では、2002年から2003年あたりが、遍路の人数のピークだったと思う。
 風の盆もご多分にもれず、人気を集めていた。行こうと思い立ったのが1カ月前と遅く、八尾では宿が取れず、苦労の末に富山市で何とかホテルを見つけた。
 夜になって、列車で八尾に出かけた。列車は1台待ち。しかも満員。八尾に着くと、駅から踊りの地区まで、人波が続く。道筋には露店の列。それまでに見たこともないような数だった。
 踊りの地区は坂のある狭い地区。そこに、人が押しかけた。道で踊ろうとする人たちがいると、観光客が取り巻く。「いつ踊るんですか」と聞くと、「こんなに人が多くては踊れません」という答え。それでもしばらく踊ってくれ、とにかく踊りは見た。
 坂をさらに登っていくと、狭い踊りの場がある。人垣の後ろの方で30分ほど待ち、頭と頭の間から何とか踊りを見た。
 女性は編み笠をかぶり、いわゆるゆるやかな盆踊りのように踊るが、右手を前に出し、ひじを曲げて手先を上に向けて止めたり、体を少し後ろにそらせて不安定な格好で一瞬動きを止めたり、微妙なリズムがある。男性の方もヤッコのような格好をして、動きを止めるようなリズムがある。男女ペアになって踊るしっとりしたものもあった。。
午後11時ごろ、八尾駅に着いたが、悪い予感が当たった。臨時ダイヤ以上に列車を増発していたのだが、1時間ほど待って乗ることができた。ホテルに着いたのは、午前1時前だった。(梶川伸)2020.09.20

更新日時 2020/09/20


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