心にしみる一言(263) 体の中に命が入ってくるのがわかった
◇一言◇
体の中に命が入ってくるのがわかった
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テレビでおなじみの女優、高木美保さんの講演を聞いたことがあった。2002年のこと。家庭に恵まれない子どもたちのために里親を探す活動をしている家庭養護促進協会が催した。
協会のメンバーに誘われて行ってみた。演題は「「自然が教えてくれたもの」で、高木さんの体験談が印象に残った。
高木さんによると、デビュー5年で年収5万円。しかし1回売れると、翌年は何千万円にもなった。考え方がおかしくなり、「その生活を落としたくない」と考え、さらに女優の肩書きを失うのが恐ろしくなって、1年、2年休みなく働いたそうだ。
自立神経失調症になり、パニック発作が起きた。薬が効かなくなって、うつ状態になった。毎日考えるのは死ぬこと。
青森県・奥入瀬の自然と出会った。真冬だった。それでも生き生きと見えた。冬枯れの景色よりも、私の心の方が枯れていた。私に足らないのは、お金では買えないもの。涙が止まらなかった。その時、「もう1度生きよう」と決めたという。
10年かけて仕事を減らしながらお金をためた。栃木県・那須高原に住んだ。講演の時で「野菜は25種類ほど作っている。去年から米を作っている」と話していた。
そして、トマトの話題になった。「トマトを種から作った。もぎたての完熟トマトを食べた。腰のあたりからポカポカしてきて、肩まで上がってきた。ひどい肩凝り、肩でプチッとはじけた」
「その音が聞こえた」と語った。その一言が印象に残った。それを、「不健康な体だから、体の中に命が入ってくるのがわかった」と表現した。さらに、「病気をしたことを感謝する」と続けたのだった。(梶川伸)20.10.10
更新日時 2020/10/10