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心にしみる一言(262) 大坂は商人の街で、日銭を持っていたから外食が多く、食い意地が張っていた

広島県の職員がまとめた1992年の人口10万人あたりの飲食店数

◇一言◇
 大坂は商人の街で、日銭を持っていたから外食が多く、食い意地が張っていた

◇本文◇
 食べ物に関する記事は、読む人にも人気があるが、取材する記者も楽しいことが多い。私が1番おもしろいと思ったのは、人口10万人あたりの飲食店の数を、都道府県別に集計したものだった。
 このデータは広島県広報課の職員がまとめた。古くて申し訳にないが、1992年商業統計(飲食店)と、92年10月の推計人口とを組み合わせたものだった。
 狙いはお好み焼きの人口当たりの店数は、広島県が1番と証明することだった。狙い通り、広島県がトップで、兵庫県2位、大阪府3位だった。
 職員はこれに気を良くし、13の食べ物のジャンル別と、店トータルでもランクづけをした。これが興味深い。
 お好み焼き屋以外のジャンル別のトップを挙げてみる。▽一般食堂=山梨県▽日本料理=東京都▽西洋料理=東京都▽ラーメン=山形県、東京都▽中華料理=東京都▽焼き肉=大阪府▽東洋料=東京都▽うどん・そば=香川県▽すし=東京都▽喫茶店=高知県▽ハンバーガー=沖縄県。そして、トータルでは大阪府が1番だった。
 大阪は昔から「食い倒れ」と言われる。個別ジャンルのトップの数では東京に及ばなかったが、総合で1位となり、面目を保った。
 そこで記事は、食い倒れへと展開した。コメントを求めたのは、伝統料理研究家の奥村彪生さんだった。奥村さんによると、「食い倒れ」は江戸時代からのことという。その裏付けとして、天保年間の本「花の下影」を例示した。これには300店もの大坂のグルメ情報がカラーイラストで書かれているという。
 そして、取り上げた言葉となる。「大坂は外食が多かった。商人の街なので、みんな日銭を持っていて、食い意地が張っていた。船場では、明治、大正の繁栄していた時期には、でっちさんも夜こっそり食べに行ったほど」
 データも解説もおもしろかった。(梶川伸)2020.10.04

更新日時 2020/10/04


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