心にしみる一言(234) 昼食は料亭を予約しているので
毎年、長野県辰野町から、信州リンゴを送ってもらう。しかし、リンゴの花を間近に見たことがない。そこでお願いをして、2019年5月に、そのリンゴ農家を訪ねた。
JR辰野駅に、奥さんが車で迎えに来てくれた。偶然なのだが、インスタグラムの知り合いが、気に入った場所として、辰野町の庭の写真を載せていた。個人の家のオープンな庭で、「癒やし丘」と名づけられていた。
ひょっとして奥さんが知ってはいないかと思って尋ねると、「もしかしたら」という場所に案内してくれた。まさのそこだった。シバザクラ、サクラ、モモ、チューリップといった花が咲き乱れ、実に美しい空間だった。
車に乗ると、奥さんが「昼食は料亭を予約しているので、心配しないで」と言った。リンゴを送ってもらっているだけなのに料亭とは、と思って驚いた。しかも、癒しの丘に寄ったので、午後2時前になっている。店はやっているのだろうか。第一、農家ばかり地域なのに、料亭があるのだろうか。疑問はドンドン膨らんだ。
走り出して3分ほどして、「着きました」と言う。見れば、ごく普通の農家ではないあか。ただ、最近は古民家を使った店もある。それにしては、玄関までの動線に農機具などが置かれ、それらしくない。
実は奥さんの家だった。「料亭」と言ったのは、奥さんが昼後はを用意しているという意味だった。何とユーモアのあること。
待っていたご主人も交え、遅めの昼ご飯となった。メーンはタケノコご飯。それにマスの南蛮漬け、山菜の天ぷら、野菜類。タケノコはあくがなくて食べやすく、恥ずかしげもなく、お代わりまでしてしまった。
心づくしの味。人の良さがにじみ出るもてない。料亭もかなわない。癒しの丘から近い場所だったというl偶然にも感謝した。
食べ終わって、家の横のリンゴ園へ。花は1分か2分咲きくらいで、まだ少なかった。赤が加わったピンク色のつぼみだが、咲くと白くなる。1カ所から5つほどの花がつき、真ん中だけを残して、リンゴにするそうだ。遠く南アルプスの山には雪が残っていて、花の背景に入れて写真に撮った。信州の春は、花も味も人も美しかった。
(梶川伸)20.05.15
更新日時 2020/04/15