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心にしみる一言(206) 小指の痛み

沖縄県糸満市、平和祈念公園内の「平和の礎(いしじ)」

◇一言◇
 小指の痛み

◇本文◇
 大阪には沖縄県出身者が多い。30年数年前、沖縄出身者を訪ね、その思いを「大阪の沖縄」という小さな連載記事にしたことがある。
 戦争が終わった後、戦地の沖縄出身者は沖縄、横浜、大阪に引上げてきた。大阪は病院も造って迎え入れた。大阪のパンと麺(めん)の業界が、日本復帰前の沖縄から集団就職の若者を呼び寄せた。復帰前に、沖縄出身者のための集会所に、国が予算をつけた。そんな歴史も聞かせてもらった
 大阪と沖縄との関係は良かったのだが、それでも沖縄出身者がアパートの部屋を借りようとして断られた、という事実も知った。沖縄独立運動の拠点が大阪にあったことも教えられた。
 取材の中で聞いた言葉に、「小指に痛み」があって、忘れられない。「沖縄戦、米国の占領、米軍基地に囲まれた生活を、日本全体としては小さな痛みとしてしか感じていない」との主張で、それを「小指の痛み」と表現した。それから長い歳月が過ぎたが、沖縄の痛みが、政府や日本人の体全体の痛みになっているとは思えない。(梶川伸)2019.08.27

更新日時 2019/08/27


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