心にしみる一言(203) つゆは口に合いますか
◇一言◇
つゆは口に合いますか
◇本文◇
岐阜県多治見市の修道院に、友人とワインを買いに行ったことがある。2015年のことだった。昼ご飯はうどん屋「信濃屋」に入った。古い平屋建ての小さな店だった。
食べたのは「香露かけ」。変わったうどんだった。麺(めん)は太目で、表面はフニャフニャしていて、伊勢うどんの食感に近い。しかし、芯(しん)の方は固さを保っている。つゆは黒っぽくて、甘辛系統だが、見た目の黒さとは反対にマイルドで、飲み干せる。
隣りのテーブルにいた常連らしい夫婦が、香露かけをれぞれ食べた後、もう1杯頼んで2人で分けた。さらに中華そばを頼み、2人で食べていた。
それを見習って、私たちも中華そばを頼んで分けた。麺は平たく、パリパリのような固さ。つゆは香露かけのつゆに鶏ガラスープを混ぜたような味で、黒いのに透明感がある。
店は週に4日だけ開くそうだ。残りの日は仕込みをするのだと、常連夫婦が教えてくれた。麺がなくなり次第、店じまいするという。
香露かけを食べている最中、店の主人が奥から出てきた。口から出たのが、紹介した言葉だった。つゆを濃くしたり薄くしたり、食べている途中で調節してくれるのだとか。そんな気遣いをする店だった。
食べ終わって店から出ようとすると、また主人が出てきて、どこへ行くのかを聞き、道順を教えてくれた。(梶川伸)2019.08.09
更新日時 2019/08/09