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心にしみる一言(175) 4軒分40の墓のお参りをする

佐柳島の墓地は、花に飾られていた

◇一言◇
 4軒分40の墓のお参りをする

◇本文◇
 島の状況は厳しい。過疎化が急激に進む。瀬戸内海の島もそうで、それを留めて活性化する調査・活動をしている女性と話していて、20年ほど前に高松に住んでいた時に訪ねた佐柳島(さなぎしま)で聞いた言葉を思い出した。
 この島は両墓制で、遺体を埋める埋(うず)め墓と拝み墓(参り墓)の2つに分かれている。土葬だったため、埋めた場所は遺体が朽ちていくと沈んでいくので、黒い石を積み、その上に白い石を積むだけ。拝み墓の方に、ちゃんとした墓石を設ける。
 戒名はすべて西向きに書かれている。西方浄土の思想だろう。ただ1つ、「宮崎将監之墓」と逆向きに書いてある墓が1番端にあった。「佐柳島の祖先で、みんなを見守っている」と、島の人は話していた。
 島の人は、毎朝墓にお参りをする。お年寄りにとっては、それが日課らしい。島を出る人は多く、留守の家の墓は、親類が守っている。
 話を聞いた女性は、4軒分40の墓のお参りをしていた。そのために畑で四季の花をつくり、墓に花を絶やすことはないと、自、というのが自慢だった。
 その墓地からの帰りにも、右手に花を持ち、左手に水の入ったポリタンクを持った何人もの女性に出会った。お参りは島の人たちの生活の一部になっていた。(梶川伸)2018.12.30

更新日時 2018/12/30


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