心にしみる一言(173) せっかく勉強したのだから、(夫の病気が治ったら)私が公園を案内してあげる
◇一言◇
せっかく勉強したのだから、夫の病気が治ったら、私が公園を案内してあげる。
◇本文◇
1996年に高松市に赴任した。着いた翌日のちょっとした出会いで、いっぺんに高松が好きになった。
引っ越しの荷物を解いて、高松の代表的な観光地、栗林公園に行ってみた。すると、「ガイドしましょうか」と、年配の女性から声をかけられた。香川県長寿社会センターのボランティア「ふるさとガイド」の方だった。
お願いをすると、「実は私もガイドの初日」だという。初めてのガイドとはいいながら、公園にまつわる歴史をよく知っていた。「台所で茶碗を洗いながら、参考書を覚えたんですよ」。見せてもらった参考書は、自分でワープロを打って作ったもので、その努力に感服した。
途中で雨が降ってきて、掬月亭(きくげつてい)という建物で雨宿り。そこで話をしているうち、夫が病気で長く寝込んでいると聞いた。夫は栗林公園が好きだという。だから、取り上げた言葉を語りかけているのだと、優しい顔で語っていたのが印象的だった言。
初めての出会いが、その土地の印象形成に大きく影響を与えるものだ。たった1人のおかげで、20年あまりたっても赴任2日目の印象は変わらない。
(梶川伸)2018.11.30
更新日時 2018/11/30