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心にしみる一言(166) 彼女はいつも涙を流していた。この人の涙はいつ止まるんやろか

「心へんろ」1回目

◇一言◇
 彼女はいつも涙を流していた。この人の涙はいつ止まるんやろか

◇本文◇
 一緒に四国を回った遍路仲間の1人、京都府宮津氏の女性が亡くなった。仲間を詳しく取材させてらって、毎日新聞に連載記事「こころ遍路」を書いたことがある。13年も前のことだ。
 長い連載だったので、主人公を設定した。兵庫県丹波市の女性で、娘を25歳の誕生日の6日前に列車事故で亡くし、悲しみの中での遍路だった。その人を、みんなが気にかけていた。亡くなった女性もそうだった。そして、取り上げた言葉を口にした。
 列車事故というものが、自身の悲しみに重なっていたからではないか。
 「親と一緒にお遍路に行こうと話していた。私の母も線路で死んだ。線路を道路と間違えて歩いていた。列車が来て風圧で倒れてショック死した。父は60歳の最後の出張で、地下鉄のホームから落ちて死んだ。最後の電話は私がとった。『お盆までには帰る』と言っていたのに」
 主人公の女性の家を遠路はるばる訪ね、仏壇に手を合わせた。彼女を自宅の方に呼んだこともあった。遍路仲間の1人が瀬戸内海の佐柳島(さなぎじま、香川県)出身で、小さな島あげての桜祭りに誘われ、彼女を連れて泊まりに行ったこともあった。
 「彼女はそのままでは、深みにはまっていく思った。穴倉から出てきた時に少し変わった」。これも彼女から聞いた言葉だった。(梶川伸)2018.09.01

更新日時 2018/09/02


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