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心にしみる一言(165) 酔芙蓉の花は1つ1つははかないが、全体としては強い

大乗寺の酔芙蓉

◇一言◇
 酔芙蓉の花は1つ1つははかないが、全体としては強い

◇本文◇
 京都市山科区花山大峰町に、大乗寺(だいじょうじ)という小さな寺がある。「酔芙蓉(すいふよう)の寺」として知られるようになり15年近く前、岡澤海宣住職に取材をさせてもらったことがある。酔芙蓉の時期を迎え、
 酔芙蓉は朝白く咲く。次第にピンクになり、夕方には赤くなる。「おとめがお酒を飲んで、ほんのり紅をさすように」と、住職は表現する。そして、翌日散る。「芙蓉は1日花。無常をさとす花」。これも住職の言葉で、取り上げた言葉へとつないだ。
 1日花は仏花にふさわしい。しかし、「10月になると、夕方にピンクになる。翌朝も残り、2日花になる」とも明かした。
 住職の話はおもしろかった。法華宗大本山本能寺に40年いて、執事長も務めた。退職になり、「いい寺に行ってもらう」と言われて、大乗寺に入った。住職によると、「荒れ放題の寺で、参道はなく、山門は倒れていた。ジャッキを使って、自分で門を起こし、妻と2人で開墾をした」。
 「誰1人来ん寺だった」そうで、お参りにきてもらうために考えたのが酔芙蓉だった。もらった10株から挿し木で増やしていったそうだ。酔芙蓉も強いが、住職も強い。(梶川伸)2018.08.30

更新日時 2018/08/30


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