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心にしみる一言(167) 死んでむなしいと思う。しかし、魂は残された人を心配して、愛する人のところに来ているんですよ

取材をさせてもらった遍路グループ

◇一言◇
 死んでむなしいと思う。しかし、魂は残された人を心配して、愛する人のところに来ているんですよ

◇本文◇
 悲しみ、苦しみ抜いても答が出ない時、京都市の寂庵に瀬戸内寂聴を訪ねる女性は多い。前回に紹介した毎日新聞の連載「心へんろ」の主人公の女性もそうだった。
 娘を25歳の誕生日の直前に鉄道事故で亡くし、自分のせいだと思い込んでいた。墓参りばかりの日々。絶望の底で寂庵に行き、寂聴さんに勧められて遍路に踏み出したのだった。
 取材の中でそう聞いていてので、寂聴さんに確認を取る取材に行った。自分のそばにいる人を亡くした時、口にするのが取り上げて言葉だという。言葉は続く。「『セミが鳴いているねえ』と、生きている時と同じように話しかければいい。『うんうん』と言ってくれますよ」。この言葉で、何人の女性が救われたことだろう。
 連載の主人公と同じように、娘を亡くした女性についても語った。
 -ー毎日毎日泣きわめて、手のつけられない女性がいたので、遍路に行くことを勧めた。私と一緒なら行くという。ご主人も一緒に行った。
 お寺を3つくらい回ったところで、「鐘をついてごらん」と言った。いい音がした。人を見たら泣いて、笑ったことのない人が、ニコッとした。「もう1度ついてごらん」。気持ちよさそうな顔をした。その後、ご主人と2人で回り、満願すると、全く穏やかな顔になっていた。遍路は札所から札所に行って拝むだけ。どうってことない。でも、癒される何かがある。-ー
(梶川伸)2018.09.08

更新日時 2018/09/08


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