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心にしみる一言(143) 地酒だから、いつも顔を見てる人に米を作ってほしい

畑酒造の外観

◇一言◇
 地酒だから、いつも顔を見てる人に米を作ってほしい

◇本文◇
 10年ほど前、近畿の酒蔵を訪ねて紹介したことがある。滋賀県東近江市の畑酒造もその1つだった。当時は4人で酒を造っていて、中心になっていた畑大治郎さんから話を聞いた。
 大手酒造会社へのおけ売りが中心だったが、日本全体で日本酒の販売量が減る傾向の中で、買い取りを断られた。一方で、ディスカウント店や量販店が力を伸ばし、酒も価格競争の時代に入っていた。小さな酒蔵では対応が難しく、販売は思うようにならなかった。
 大ピンチに陥った時、活路を見い出そうとしたのは、自社ブランドの「大治郎」だった。近くの酒好きの農家の人が、「自分の米の酒を飲みたい」と思いを語ったのが、方向転換のきっかけになった。契約栽培で酒米を作ってもらう農家は少しずつ増えていったが、その基本にあったのは、取り上げた言葉だった。
 ほかにも、影響をうけた言葉がある。新しいブランドができると、今度は販売の算段をしなければならなかった。その時に、地酒の販売店のアドバイスを受けた。それは、「味に納得して売ってくれる店を見つけること」だった。
 サンプルを持って店を回り、「ちょっと飲んでもらえませんか」と働きかけた。「それまでは、店との交渉は価格が大きな要素だった。一般的な酒造りにどっぷりとつかっていたので、味が交渉の中身になるとは思ってもみなかった」と、畑さんは振り返っていた。(梶川伸)2018.01.29



更新日時 2018/01/29


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