心に残る一言(141) 「お父ちゃんだけでも助かって」。妻の言葉が忘れられん
◇一言◇
「お父ちゃんだけでも助かって」。妻の言葉が忘れられん
◇本文◇
阪神大震災(1995年1月17日)から4日目、神戸市長田区、JR新長田駅周辺の被災地で取材をした。木造家屋の密集地で、発生から2日間燃え続けた。まちは跡形もなくなった。3日目に自衛隊が入り、取材した4日目は遺族があちこちで遺品を掘り起こしていた。
「火葬場に行ったんと同じや」とつぶやいた年配の男性がいた。妻の白い骨のかけらを集めていた。普通の火事の焼死体とは違い、激しい炎は妻の体を焼き尽くし、遺骨に変わっていたのだ。
水屋が妻の上に倒れ、すぐに隣の2階も覆いかぶさってきた。男性は必死に助けようとしたが、火が襲ってきた。その時に妻が発した最後の言葉が「「お父ちゃんだけでも助かって」だった。
男性は集めた遺骨のそばにジュースの缶を置き、それに線香を立てて、手を合わせていた。(梶川伸)2018.01.17
更新日時 2018/01/16