寺の花ものがたり(140) 石光寺(奈良県)寒牡丹=11月下旬~1月中旬
以前、時期の関係もあって、寒咲き菖蒲(あやめ)を紹介したことがる(寺の花ものがたり36回)。しかし、石光寺といえば、寒牡丹(かんぼたん)を取り上げないわけにはいかない。
わらで作った三角帽子のようなものを被っている。その風情を見に、何度か寺を訪ねた。残念ながら、雪を乗せている日はなかったが。
染井義孝住職に牡丹の話を聞いたことがあった。寺の牡丹の歴史は古い。先々代は春牡丹をちょっと、寒牡丹をちょっと、人の目につかないように、自分1人で楽しんでいた。それが口づてに広がって、見に来る人が出てきた。戦争中も、移植して逃がした。先々代は1945年に亡くなった。
戦後、先代が増やした。近鉄がポスターに使って、県外からも来るようになった。昭和30年ごろから、寒牡丹の寺として知られるようになった。
寒牡丹は36種300株。自生は半分。隔年に咲くもの、オリンピックのように咲くものがあって、半分くらいがその年に咲くらしい。
牡丹を愛しているのだろうと思ったら、意外な言葉が口をついて出た。「花に興味はない」
実は、興味はほかにあった。「接ぎ木をする。活着するのが楽しみ。本植えし、木ぶりが成長していく過程が楽しい。青い葉っぱがこたえられない。茶色になったら、胃が痛うなる。育てることが楽しいから、やめられない」。これも、牡丹が好きなあかしだろう。
◇石光寺(せっこうじ)◇
奈良県葛城市染野387。0745-46-2031。近鉄二上神社口から徒歩20分。拝観有料。天智天皇の時、この地に光を放つ三大石があり、掘ると弥勒(みろく)三尊の石造が現れて、堂宇を建立したと伝えられる。本尊は阿弥陀如来。中将姫伝説ゆかりの寺。関西花の寺霊場第二十番。
(梶川伸)=状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください。2017.12.15
更新日時 2017/12/15