このエントリーをはてなブックマークに追加

寺の花ものがたり(286) 乙訓寺(京都府長岡京市)桜=3月下旬~4月初旬

2022年4月6日撮影

 四国88カ所遍路は江戸時代に盛んになり、それにつれて各地にミニ88カ所が設けられるようになった。写し霊場という。
 遍路の先達(案内人)をしていることもあって、写し霊場もいくつか回った。その経験を買われ、毎日新聞旅行でミニ88カ所を回る日帰りバスツアーの計画づくりと案内人を頼まれていた時期があった。
 京都市の御室88カ所を歩いた時だった。この写し霊場は仁和寺の裏山に設置されていて、約2時間で1周することができる。
 時は4月。せっかく花の良い時期なので、遍路だけでなく、花の寺も組み込もうと欲張った。仁和寺は御室桜の名所だから、ミニ霊場を歩いた後のツアーのしめくくりにした。
 最初の立ち寄り寺ととして選んだのが、牡丹(ぼたん)で知られる乙訓寺だった。うまくいけば、桜と一緒に楽しめると考えた。
 寺に着いた。境内には2000株もの牡丹があるが、まだほんの咲き始めだった。少し時期が早いのではないかと心配していたが、その通りになってしまった。
 一方、桜の方は少し遅いかもしれないと気にしていたが、こちらは何とか残ってくれていた。特に枝垂(しだ)れ桜は、伽藍や門の屋根に花が降りかかっているようで、風情があった。とは言っても、数は多いわけではなく、あくまでも牡丹の添え物でしかない。
 牡丹を見る時間が短くなったので急遽、もう1カ寺、光明寺に寄り道をすることにした。ここは秋の紅葉の寺だが、青紅葉も美しい。これで失点を挽回したが、花の鑑賞時期は難しいので、欲張ってはいけないという教訓を得た花見だった。

◇乙訓寺(おとくにでら)◇
 京都府長岡京市今里3-14-7。075-951-5759。阪急長岡天神駅から徒歩20分。飛鳥時代に推古天皇の 勅願で聖徳太子が開いたとされる。本尊は合体大師像(弘法大師と八幡神)。牡丹の時期は入山有料。
(梶川伸)=状況が変わっていることもありますので、ご了承ください。2022.03.27

更新日時 2022/03/27


関連リンク