寺の花ものがたり(288) 長谷寺(奈良県桜井市)石楠花=4月中旬~下旬
長谷寺は西国観音霊場の1つとしても参拝客が多いが、花の寺としても知られる。秋は紅葉の名所となり、広い境内に赤い色を散りばめ、黒や灰色の伽藍に彩りを添える。
春は華やぐ。桜は白いかすみのように広がり、全山を包む。牡丹(ぼたん)が登り回路に沿って帯をつくり、あでやかな縁どりとなって登っていく。
その2つの花の間の短い時期も、花が途切れることがない。石楠花(「しゃくなげ)もその「つ。牡丹を見に行った時に、たくさん咲いているのに気づいた。登り回廊や境内を回る道のそばに。
ただ、木立の中に株があるので、多くは見え隠れする状態で咲いていた。数は多いのに、強く花を主張するのではなく、奥ゆかしさを感じる。西洋石楠花の濃い赤もあるが、日本石楠花の淡い色もあり、それこそが緑の中でふさわしい。
◇長谷寺(はせでら)◇
奈良県桜井市初瀬731。近鉄長谷寺駅から徒歩15分。0744-47-7001。道明上人が天武天皇のために千仏多宝仏塔を安置し、徳道上人が聖武天皇の勅命で十一面観音をまつったのが起こりと伝えられる。真言宗豊山派の総本山。西国観音霊場8番。入山有料。
(梶川伸)=状況が変わっている可能性もありますので、ご了承ください2022.04.05
更新日時 2022/04/05