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心にしみる一言(135) 何もなかった平面上に点を置く。人間のできる最低限のことで、世界に存在を知らせることができる

◇一言◇
 何もなかった平面上に点を置く。人間のできる最低限のことで、世界に存在を知らせることができる

◇本文◇
 点字が美術作品となるとは、思ってもみなかった。そこで随分と昔だが、石原友明さんの現代美術の展覧会に見に行ったことがある。石原さんの話は、「なるほど」と感心するっことが多かった。 
 「美術家は視覚的な刺激に中毒症状になっている」。ところが、「作品はさわる(作る)ことから始まって、見るのは後」。それなのに「美術館では、作品に手を触れないで、という風に変わる」。そんな「落差」に興味を持ち、点字に結びついたそうだ。
 点字は、意識を伝えると同時に、「きれいで、彫刻のような美的な魅力を持っている」と語った。もう1つ、「点字を打つ、という行為で、肉体を介在させていることも重要な要素」だと。その本質が、取り上げた言葉だった。
 真ちゅうの四角いプレートが床に敷き詰められ、一枚ごとに別々のメッセージが点字で打ち込まれていた。天井にシャンデリア。靴を脱ぎ、プレートの上に乗って、作品と触れ合い、上からの光と、下からの反射光を体に浴び、点字の小さな盛り上がりを体感する、繊細な作品だった。(梶川伸)2017.11.25

更新日時 2017/11/25


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