心にしみる一言(130) 酔っぱらいがオシッコをかけても、「いいよ、いいよ」とうなずく
◇一言◇
酔っぱらいがオシッコをかけても、「いいよ、いいよ」とうなずく
◇本文◇
大阪市北区の阪急東中通商店街は、飲食店の多い繁華街だ。道端に、高さ50センチほどの大黒天が安置されていて、お祭りがあった時、大黒さまを世話をしていたおばあちゃん・堂内やすえさんの話を、商店街の理事長から取材したことがある。随分と昔のことだ、先日、仲間と一杯やるためにその商店街を通り、懐かしくなって、パソコンに残していた当時の原稿を読んでみた。
堂内さんは空襲で焼かれたままになっていた大黒さんを見つけた。居酒屋を開いてからは、店の前のまつった。
ビールや酒を飲むのが大好きなのに、お供えや飾られるのは嫌いな大黒さまだと、商店街の人は言う。酔っぱらいがオシッコをかけても、「いいよ、いいよ」とうなずくそうだ。だれかが引き取って安置しようと声をかけると、首を振って「いやや」と断った。
もちろん、大黒さまがしゃべるわけではない。堂内さんが代弁したのだ。「毎晩、ビール飲ませてあげてな」と言うので、近くの人や客が、大黒さまにかけてあげる。
堂内さんは気のいい、あかぬけたおばあちゃんだったそうだが、89歳で亡くなった。「大黒さまの面倒をみてな」と言い残して。堂内さんの遺志は、近所の人たちが継いだ。堂内さんの誕生日の前後に、振興組合が大黒さまのお祭りをし、「ビール飲んでまっせ。心配しなや」と、堂内さんに報告していた。(梶川伸)2017.10.10
更新日時 2017/10/10