心にしみる一言(127) 堂入りは野生の動物に近い感覚になる
◇一言◇
堂入りは野生の動物に近い感覚
◇本文◇
比叡山延暦寺に千日回峰行という難行がある。先日、釜堀浩元さんが満行して大阿闍梨(あじゃり)となった。戦後14人目だという。
1994年に上原行照さん(心にしみる一言18回)が戦後11番目で達成した後、大阿闍梨を訪ね歩いたことがある。光永澄道さんもその1人だった。
行は夜中に比叡山の山中を駆け巡るのが中心で、その途中に9日間も山中の堂にこもり、断食、断水、不眠、不臥(が)で不動明王の真言を唱え続ける「堂入り」という行も。体験する
「回峰は、動の中に静を求める。堂入りは、静寂の中で自分を見つめる」。光永さんは、そんな言葉から語り始めた。堂入りは人間業とは思えない。その行による自らの変化が、上記の言葉だった。
「食事をとらないと眠くならないが、極限状態になると、自分の気持ちが浮遊してくる。感覚はとぎすまされ、普段は見えないものが見えてくる。午前5時半になると、外で鳥が鳴きながら飛んでいくのが見える。空気のうまさがわかるし、膚で呼吸していることもわかる」
締めくくったのは、「悟り悟りで未悟(みご)の境」という言葉だった。人間は、どこまでいっても深いものだ。(梶川伸)2017.09.21
更新日時 2017/09/21