心にしみる一言(114) 楠公だきは、見た目はたくさんあって満足しますが、すぐにおなかが減るんですよ
◇一言◇
楠公だきは、見た目はたくさんあって満足しますが、すぐにおなかが減るんですよ
◇本文◇
戦時中の食生活で、「楠公だき」という米のたき方があったそうだ。戦争に関する取材の際に、取材相手に教えてもらった。米のかさを増やすためだったが、その方法ははっきりしなかった。そこで、小さなコラムに書き、情報を期待した。
大阪府岸和田市の女性から、「方法を覚えている」と電話をもらった。1943年前後に母が婦人会で習った。まずフライパンで、薄いキツネ色がつくまで米を空炒りする、釜で熱湯をわかし、その中に炒った米をバサッと入れる。どのくらいの時間たいたのかについては、記憶が薄れていたが。
米のかさは1.5~2倍に膨れたようだ。ただし、取り上げた「見た目はたくさんあって満足しますが、すぐにおなかが減るんですよ」と続いた。
当時は、楠木正成、正行の「楠公」の忠君思想をたたきこまれていた。楠公だきの名前は、その影響があったのだろう。母は「楠公さんはいつも、炒り米を携帯食として持ち歩いていた」と話しながら、楠公だきをしていたそうだ。
大阪府豊中市の女性は、「楠公めし」と呼んでいたと教えてくれた。「熱湯のかまに、炒りたての米を入れると、あわが瞬時に立ち、急いでふたをしてたきました」。4倍くらいの水量でたき、驚くほどかさが増えた。「ざっと3倍程度だった」と。作り方は岸和田の女性と同じで、「1合の米で、家族5人が食べることができたので、頼りないのも当然でしょう」と、これも同じ感想だった。(梶川伸)2017.07.17
更新日時 2017/07/17