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寺の花ものがたり(109) 久米寺(奈良県橿原市)紫陽花=6月中旬~7月上旬

2017年6月16日撮影

 京都に比べ、奈良の寺はのんびりできる。奈良県内でも、奈良市を離れれば、法隆寺などいくつかの寺を除けば、参拝客も少なく、ゆったりと時を過ごすことができる。橿原市の久米寺もしかり。
 寺には、「久米の仙人」のユーモラスな逸話が伝わる。欽明(きんめい)天皇の時代に生まれ、吉野山で神通飛行術を身につけ、空中を自由に飛べるようになった。仙人は百数十年も久米寺に住んだ。ある日、川で美しい女性が洗濯しているのを空から見たが、女性のふくらはぎに目がくらみ、神通力を失って墜落したという。こんな楽しい話があれば、みんなの足が向いても不思議でない。
 寺は紫陽花(あじさい)の数も多い。40種3500株の紫陽花園を持っている。訪ねた時は平日だったこともあってか、参拝客はまばらだった。園は有料(400円=2017年)なので、入り口にボックスがあり、係の女性が入場券を渡してくれる。しかし暇なようで、境内の掃除などを続け、入場者がいるとボックスに帰ってくる。おおらかである。
 園の中は、紫陽花で迷路のようになっている。ブルー系、ピンク系、紫系のオーソドックスな種類が多いが、白い柏葉紫陽花や、隅田の花火の系統の花もある。
 園の中に、多宝塔があるから面白い。重要文化財で、その周りにも紫陽花が密集していて、写真撮影スポットになっている。朱と白の塔を背景に、色とりどりの紫陽花を撮る。
 園内にいた半ズボンの男性が、むき出しの足をかいていた。「そういえば、インターネットで調べた時、蚊に気をつけるよう書いてあったなあ」の声が漏れた。何だかこれも、奈良の寺らしい。

◇久米寺(くめでら)◇
 奈良県橿原市久米町502。0744-27-2470。近鉄橿原神宮前駅から徒歩10分。久米部(くめべ)の武人の住んだ地といわれ、推古(すいこ)の時に聖徳太子の弟だった来目皇子(くめのおうじ)の創建と伝えらる。本尊は薬師如来。多宝塔は京都市の仁和寺(にんなじ)から移築されたもので、桃山時代の様式を残す。境内は自由だが、紫陽花園は有料。
(梶川伸)=状況が変わる可能性もありますので、ご了承ください2017.06.19

久米部 来目皇子 久米の仙人

更新日時 2017/06/20


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