心にしみる一言(103) 美醜の感覚などから始まる偏見が、根っからなくなるのは幻想に近いものがあります
◇一言◇
美醜の感覚などから始まる偏見が、根っからなくなるのは幻想に近いものがあります
◇本文◇
90年にわたって、誤った医学知識に基づきハンセン病患者を抑圧してきた「らい予防法」が1996年4月1日に廃止された。強制隔離、就業禁止、外出制限などを定め、患者の人間性を無視した法律だった。同時に「ハンセン病は怖い病気だ」とする差別と偏見を助長した。
法が廃止になった機会に、高松市のハンセン病国立療養所「大島青松園」を訪ねて、元全国ハンセン病患者協議会会長、曽我野一美さんにインタビューした。法廃止への運動は、「人間を返せ」のスローガンを掲げた闘いで、曽我野さんはリーダーの1人だった。
聞いてみたかったことの1つは、「らい予防法廃止イコール偏見のない社会と言えるか。偏見を無くすためには、どうしていけばいいのか」ということだった。
曽我野さんは「ハンセン病への対応は、次第にソフトになってきてはいます」として、1つの具体例を挙げた。「愛媛県の教会と20年近い交流がありますが、教会だけでは泊まれないので、信徒の家に泊めてもらい、家族が入る前にふろに入れてもらったりしています。本当に頭が下がる思いです」と。
だが、「しかし」がついた。「社会全体がそうではありまん」と言葉を継ぎ、取り上げた言葉に続いた。「自分の中に持っているコンプレックスを取り除くことも含め、偏見をなくすために努力は続けなければなりません」。その言葉が耳に残っている。
法の廃止から20年あまり。曽我野さんが臨んだ「ハンセン病が普通の感染病を同じように見られる社会」になっただろうか。(梶川伸)2017.05.03
更新日時 2017/05/03