心にしみる一言(96) いい米と水という素材に命を吹き込むのが蔵人集団だと思います
◇一言◇
いい米と水という素材に命を吹き込むのが蔵人集団だと思います
◇本文◇
白鶴酒造(神戸市)が杜氏(とじ)制度をなくす直前、ベテラン杜氏の中澤政雄さんにインタビューする機会があった。まず、杜氏の役割とは何かを聞いてみた。工場長のような立場だが、もう少し権限を持っているような気がすると思ったからだ。中澤さんの説明は次のようで、その中に取り上げた言葉も入っていた。
「酒づくりの原点は米、水、人と思います。いい米と水に命を吹き込むのが蔵人集団です。その責任者が杜氏で、蔵では『おやっさん』と言います」
私の問に対する中澤さんが答は予想外のことばかりだった。「杜氏が1番気を使うのは何ですか」に対して、私は温度管理など製造過程の難しい点を予想していた。答は「蔵人の健康です」だった。
「自分たちは寝食を共にしながらの生活です。蔵人の輪がまづ第1になってきます。うまいこと輪が保てんようでは、いいお酒はできません。元気で蔵入りしたからには、きげんよく酒づくりをした後、春元気で帰ってほしい。朝食も昼食も夕食も、三十何人の蔵人とみんなでとりながら、顔色を見るんです」
春になっておやっさんが蔵を出る時は、「全員無事でいい酒を造ることができました」とあいさつしたという。(梶川伸)2017.03.31
更新日時 2017/03/31