このエントリーをはてなブックマークに追加

寺の花ものがたり(90)詩仙堂(京都市左京区)片栗=3月下旬

2005年3月27日撮影

 詩仙堂はそう大きな寺ではない。正式には、凹凸窩(おうとつか)で、でこぼこした土地に建てた住居という意味を表し、詩仙堂はその一室のことらしい。
 竹垣に設けられた門をくぐると、手入れされた庭がある。詩仙堂の畳に座り、庭をしばし眺める。四季それぞれに、花が趣を添える。その中でも5月の皐月(さつき)と11月の紅葉が名高い。
 京都らしい寺なので、何度が訪ねた。3月に庭を歩くと、片栗(かたくり)に目が止まった。杉苔(すぎごけ)の上の小さな薄紫。双葉を広げ、少し伸ばしたか弱い茎に、花をつけている。花びらは細く5つに分かれ、外側に身をそらしている。
 苔はまだ緑を鮮やかにはしていない。苔の間には、切り込まれたままの枯れた草が、ポツポツと茶色の筋を残っている。春の訪れのを、愛らしい片栗が使者としての役割をはたしているのだろう。
 訪ねた時、片栗の数はわずかだった。その後に増えるのかどうか、毎年この時期に姿を現すのかどうかも確認はしなかった。庭には椿、梅が咲いていた。(梶川伸)=撮影日から状況が変わってりいる可能性もありますので、ご了承ください

◇詩仙堂(しせんどう)◇
 詩仙堂丈山寺。京都市左京区一条寺門口町27。京都市営バス・京都バス一条寺下り松町下車。叡山電鉄一条寺下車。境内一円が国の史跡。寛永18(1641)年に石川丈山が詩仙堂を造営し、没するまでの30余年を過ごした。丈山は隷書、漢詩の大家で、日本の煎茶(文人系)の開祖と言われる。入山有料。本尊は馬郎婦観音。
=2017.03.05

※今回からは毎日新聞に掲載した以外の花を取り上げます。きちんとした取材をしていないため、写真と印象が中心になります。

石川丈山

更新日時 2017/03/05


関連地図情報

関連リンク