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寺の花ものがたり(87) 常寂光寺寺(京都市右京区)盆梅=2月下旬~3月下旬

2006年02月28日撮影

 色鮮やかな紅葉と結びつく寺である。実は、紅葉だけではない椿(つばき)、躑躅(つつじ)[蓮(はす)も数が多い。盆梅(ぼんばい)は、「花のない寒い時期に、香りだけでも楽しんでもらおう」という、副住職の長尾憲佑さんの思いから始まった。15年ほどになる。
 花好きの人だ。もの心ついたころ、境内の草を抜いている人に、菫(すみれ)は抜かないで」と頼んだそうだ。本人は覚えていないが、そう聞かされたと話す。それも、この場所に育ったせいだろう。「京都のちょっとわびた山寺」の雰囲気を大事にして、庭を見守っている。
 盆梅は花の時期になると、30鉢前後を境内に並べる。それ以外の時期は、裏の畑で静養させる。弱ったものは畑に戻す。2年に1度、鉢に植えるものもあるので、総数は表に出したものの2倍くらいになる。
 境内にあった木も盆梅にした。「その1つは、子どものころからある、ヒョロヒョロと高い木だった。しんだけが残って、ポキッと折れてしまいそうだった。庭木としては持ちそうもなかった」
 そんな盆栽のことを、「舎利」と言う。長年の風雪に耐えた風情と、生命力の強さを感じさせるのだと言う。鉢に植え、高さを縮めることで、魅力を増して生き返らせた。
 盆梅は水加減が難しい。やりすぎると花がつかない。やらないと成長しない。それが基本テクニックだが、機械的にやってもだめらしい。「木の特性をつかみ、根の状態も見る。育っている環境も考える。その上で、最良の状態で生きていけるようにする」
 そのためには、どうするか。「毎日見ることが大事で、調子が悪いと、変化に気づく」。何べんも足を運ぶ人が育て上手で、「人を育てるのも同じ」と付け加える。(梶川伸)

◇常寂光寺(じょうじゃっこうじ)◇
 京都市右京区嵯峨(さが)小倉山小倉町3。075-861-0435。京福嵐山駅、JR嵯峨嵐山駅、阪急嵐山駅や、嵯峨小学校前バス停から徒歩15~20分。拝観有料。1596年に日禛(にっしん)上人の開創。本尊は釈迦(しゃか)如来、多宝如来。多宝塔は重文。紅葉は約200本。
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更新日時 2017/02/25


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