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寺の花ものがたり(86) 西林寺(兵庫県西脇市)唐子椿=3月下旬~4月上旬

2005年3月27日撮影

 境内の聖天堂のそばにある1本の木が、唐子椿(からこつばき)である。本堂に通じる参道の門を入る。門の前に、「中にあります。自由にお入りください」と案内が書いてある。
 辞書によると、頭上や左右に髪を残して刈るヘアスタイルを唐子という。中国風の子どもの姿も唐子で、唐子人形や唐子踊りといった言葉もある。この椿の品種は、唐子の髪型に似ていることから名づけられた。
 花は濃い紅色で、藪(やぶ)椿より一回り大きい。花びらは一重だが、おしべが花弁化して、花芯(かしん)はフリルを寄せ集めたような塊となって、盛り上がっている。樹齢は200年を超す。1981年に、兵庫県の天然記念物に指定された。
 根回り1メートルあまり。樹高は8メートル。枝は東西8・7メートル、南北7・6メートル。椿は成長が遅いのだろう、古木なのに、それほど大きくない。住職の民岡宜賢さんは、「子どものころから変わっていない」と話す。
 花の期間は結構長い。「一つ散れば、次が咲く」。隣に白い椿の木もあり、同時に咲けば、美しさは増す。落ちた花も風情があり、すぐには片付けない。
 貴重な椿なので、挿し木で2世を育てている。ただし、種を取って育てるのは難しいようだ。「先祖帰りをして、普通の椿に戻る」と言うから、植物とは不思議なものである。
 寺は紫陽花(あじさい)園でも知られる。「子どものころは竹やぶだった」と振り返る。いまは、4000株が梅雨のころに咲き誇る。秋の紅葉もいい。
 聖天堂の入り口に柵があった。「お参りのお客様は扉を必ず閉めてください」と書いてあった。「イノシシがよく飛び込むので」と、民岡さんは困った表情を見せる。山に近い寺を、改めて実感した。(梶川伸)

◇西林寺(さいりんじ)◇
 兵庫県西脇市坂本455。0795-22-2387。高速バス西脇バス停からタクシーで1200円前後。境内無料。651年に法道仙人によって開かれたと伝えられる。平安時代に恵心僧都が中興した。本尊は十一面観音。句会が盛んに行われていて、句碑の寺でも知られる。
=2006年3月2日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性もあるので、ご了承ください)2017.02.19

法道仙人

更新日時 2017/02/19


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