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寺の花ものがたり(57) 法金剛院(京都市右京区)蓮=6月下旬~8月上旬

2005年7月6日撮影

 蓮(はす)は仏教とのかかわりが強い。「蓮は明けの明星が消え入るころに、ポンといって開くという。お釈迦さまも明けの明星が消え入るころに、お悟りになった。悟りの発菩提心(ほつぼだいしん)と言う」。住職の川井戒本さんの話に耳を傾けていると、「ポン」と「ほつ」が、どこか似ているような気がしてくる。
 話は続く。「花びらには色気がある。それが迷いであり、煩悩(ぼんのう)。花の真ん中に実ができる。それが悟り。花びらがあるさかい、チョウや蜂が飛んできて、実を熟させる。煩悩即菩提。迷いがあるから悟る。蓮は仏教の教えの根本を表している」。煩悩だらけの身には、ホッとする説明だ。
 1952年に住職になった。境内の池を、阿弥陀経(あみだきょう)にある極楽浄土にしようと思った。そこには、青、黄、赤、白の蓮が咲いていると言う。4色にちなんだ蓮を植えた。ところが、白い不忍蓮(しのばず、ばす]Rばかりになってしまった。「ほかの色が負けてしもうた」と残念がる。
 その代わり、鉢植えの蓮が80。すべて種類が違う。手持ちの蓮と、愛好家が育てたものとを交換しながら、増やしていった。春に土を引っくり返し、蓮根を取って、新しい土に植える。地下茎が伸びて、節ごとに芽を出す。
 6、7、8月の手入れは大変だ。「ともかく水やり。1鉢に1分でも、80分かかる」。カンカン照りの暑さを思いやったが、意外なつらさを教えられた。「ズボンがベトベトになり、冷えで夜がしんどうて」。年齢も上がってきたので、5年ほど前に、水やりはほかの人に任せた。
 「仏さんは蓮の上に座っている。自分も座れるようになりたい」。いつも頭の中にあると言う。しかし、「なかなかそうはいかん」のだそうだ。(梶川伸)

◇法金剛院(ほうこんごういん))◇
 京都市右京区花園扇野町49。075-461-9428。JR花園駅前。拝観有料。平安時代の初め、清原夏野が山荘を建て、死後は双丘寺(ならびがおかでら)と称したのに始まる。本尊は阿弥陀如来。毎年7月第2土曜日から3週間は、観蓮会として午前7時開門。関西花の寺霊場第十三番。
=2005年7月21日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性がありますので、ご了承ください)2016.06.23
  

更新日時 2016/06/23


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