心にしみる一言(60) 市場原理とテクノロジーが結びつくと、制度や倫理性、文化より圧倒的に先に行く
◇一言◇
市場原理とテクノロジーが結びつくと、制度や倫理性、文化より圧倒的に先に行く
◇本文◇
大阪HIV訴訟の4代目原告団長、花井十伍さんが、大学での特別授業で語った言葉だ。
たんこぶができても治らない。それで血友病とわかったという。血液製剤を使うようになり、その血液製剤で、薬害エイズの被害者となった。
「血液という人のものを使うということは何だったのか。血液は臓器なのか、薬なのか」。重いテーマの講義だった。「1980年代になって、濃縮製剤ができた。商業と科学の進歩で大量生産が可能になり、大量の売血をプールに集めて産業化した。ワン・ドナー、ワン・レシピエントという原則がナシ崩しになり、たくさんのリスクを抱えることになり、HIVに感染した」。花井さんが見極めた薬害エイズの構造だ。「市場原理だけでなく、公衆衛生原理がなくてはならない」
=20028月9日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2016.03.30
更新日時 2016/03/30