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寺の花ものがたり(47) 萬勝院(京都市山科区)牡丹=4月末~5月上旬

2004年4月28日撮影

カヤぶき屋根の庫裏(くり)を囲んで、牡丹(ぼたん)が咲き誇る。先代住職の新見竜童さんが1963年から2000株を植えた。亡くなった後は、娘で現住職の新見智章さんの妻、文代さんが世話をする。
 JR上郡駅からタクシーなら3700円ほどかかる山あいの寺。地区の過疎化が進み、何とか人を呼ぼうと考えたのが、牡丹だった。「こんな田舎に来る人がありますかね」と首をかしげる人もいたが、全国に手紙を送り、浄財を集めた。
 文代さんは振り返る。「もとは、数株が家族の鑑賞用にあっただけ。裏山は柿畑だったのを、開墾して牡丹園に変えた」
 カヤぶき屋根との相性がいい。「瓦か銅板に変えよう、という話もあったが、カヤを残してもらった」。それが幸いしたのか、訪れる人は増えていった。
 その裏には、大変な苦労がある。屋根の横幅は15メートルほどある。檀家が何年もかけて大量のカヤを刈り集めて、乾燥させておく。屋根は正面と裏側とを、別の機会にふき替える。
 牡丹は毎年のように捕植した。「病気やら虫やらで、父が植えたものはあまり残っていない」。品種は100種から140種に増えた。好きな薄紫の系統を多くした。父が好きだった色でもある。
 毎年、「花芽がつきゃあええが」と心配する。花が咲けば、雨が気になる。「花びらが大きいので、咲き切った時に降ると、しなだれて起き上がれん」
 牡丹の期間は、入山料を一応500円に設定している。しかし、咲き具合で額を変える。「3分咲きなら200円。咲き終わりには箱を置いといて、勝手に100円でも200円でも入れてもらう」。田舎の寺の、ほのぼのとしたルーズさがある。(梶川伸)

◇萬勝院◇
 兵庫県赤穂郡上郡町大冨2312。0791-54ー0158。上郡駅からバスで稗田(ひえだ)下車、徒歩1時間(便はごく少ない)。普段は境内自由。牡丹の時期(年ごとに違う)は入山料が原則500円、駐車料500円。本尊は如意輪観音。行基の開創と伝えられ、「西の高野山」と呼ばれた。
=2005年4月28日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性があるので、ご了承ください)2016.03.20

更新日時 2016/03/21


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