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寺の花ものがたり(38) 百済寺(滋賀県東近江市)山椿=2月上旬~4月上旬

2005年1月30日撮影

 雪のある境内で、長靴姿の住職、濱中亮明さんは何度か立ち止まって言った。「どこに立っても体を1回転させれば、少なくても10本の山椿(やまつばき)が見える」。藪椿(やぶつばき)が一般的だろうが、山の斜面の寺としては、山椿の方が似つかわしい。
 寺は紅葉(もみじ)で知られる。山椿は、「小さい木も含めれば、紅葉より多い。1000本はゆうにある」と、数では椿に軍配を上げる。
 自生している木だ。古いものは、樹齢が300年にもなる。種が落ちて育つ実生(みしょう)で増えていった。寒い場所なので、ほかの木が育ちにくかったこともある。それだけだではなく、寺は椿を大事にしたようだ。
 百済寺は「天台別院」と言われ、僧俗合わせて1200人が起居する学問の寺だった。ところが、織田信長の焼き討ちで、僧坊がことごとく焼けた。約300の坊跡が確認され、いたる所に残る石積みが、当時の面影をとどめる。
 「椿は根が深く伸び、石垣が崩れるの防ぐ。いわば石垣強化剤で、頼もしいやつですよ」。大学の工学部出身らしい分析だった。
 椿にはたくさんの種類がある。その中で山椿を好む。「シンプルな一重の花びらで、R清楚(せいそ)でありながら、あでやか」。境内を歩きながら、その魅力を語る。
 山茶花(さざんか)と似るが、「幹が白っぽいのが椿」。うっそうと茂った木々の中で、「日が差した時、葉が光って見えるのが椿の木」。そんな見分け方にも言及する。
 「雪の上にポロポロ落ちているいるのもいい。春の彼岸を過ぎて、木が真っ赤に染まるのも、またいい」。寒さの中で、話は熱を帯びていった。(梶川伸)

◇百済寺(ひゃくさいじ)◇
 滋賀県東近江市百済寺町323。0749-46-1036。近江鉄道八日市駅からバスで百済寺下車。拝観有料。聖徳太子により、朝鮮半島・百済(くだら)からの渡来人のために創建されたと伝えられる。
=2005年2月8日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性がありますのでご了承ください)2015.12.12

天台別院

更新日時 2015/12/12


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