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寺の花ものがたり(36) 石光寺(奈良県葛城市)寒咲き菖蒲=12月下旬~3月上旬

2005年1月19日撮影

 冬は寒牡丹(かんぼたん)で知られる。36種300株ほどあり、毎年その半分ほどが1月中旬まで花をつける。
 寒咲き菖蒲(あやめ)は、寒牡丹と重なり、そして入れ替わりながら、境内を青紫の花で飾る。普通の菖蒲とは別種らしく、やや小振りだ。
 住職の染井義孝さんは「根がショウガのようなので、何株か言いようがない。あっちでポツ、こっちでポツと咲く」と話す。
 「サラリーマンをして、寺から離れている間に、先代(父・孝熙さん)が『牡丹のほかにも何か』と思い、植えたんでしょう」
 先代は牡丹の品種鑑定の大家だった。「子どものころは、草むしりや土いじりばかりやらされた」。亡くなった先代を継いだ時、植物を育てるノウハウを教えてもらっていないと思った。ところが、小さいころの体験がよみがえった。
 「健全育成」と何度も口にする。そのためにはまず土壌。保水性があり、通気性がある土を作る。「10年かかる」。先代が土いじりをさせたのは、それを知らせるためだったのか。
 そんな土だから、いい植物が育つ。例えば寒牡丹。「10月20日ごろまで、青い、ごつい葉っぱをつけている。彼岸から10月10日までに、元気な葉を落とすと、元気な花を咲かす」
 「土は最初は手入れをするが、後は手の及ぶ所ではない」。そんな気持ちになってきた。嫌っていたモグラについても、考えが違ってきた。「土がよくなればミミズが出る。そうするとモグラも来る。それも自然のもんや。モグラは穴を開けるから、通気性がよくなる。まんざらでもないかもしれん」(梶川伸)

◇石光寺◇
 奈良県葛城市染野387。0745-46-2031。近鉄二上神社口から徒歩20分。拝観有料。天智天皇の時、この地に光を放つ三大石があり、掘ると弥勒(みろく)三尊の石造が現れて、堂宇を建立したと伝えられる。関西花の寺霊場第二十番。
=2005年1月25日の毎日新聞に掲載したものを再掲載(状況が変わっている可能性のありますので、ご了承ください)2015.11.27

寒牡丹 関西花の寺霊場

更新日時 2015/11/27


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