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心にしみる一言(35) 白い靴を今でも大切に持っとんよ 

2002年1月26日の毎日新聞

◇一言◇
 白い靴を今でも大切に持っとんよ

◇本文◇
 神戸市のJR鷹取駅に近い大国公園で、今年も阪神大震災の発生時刻に合わせ、慰霊の催しがあった。参加した女性に、その時のことを聞いた。
 真っ暗な中で家具の下敷きになり、もがきながら何とか外へ出ると、空は白んでいた。前の家がなくなっている。2階が崩れ落ちていたからだ。
その家の奥さんが言った。「靴を貸して」。極寒の中、がれきの上で裸足。大柄なので、自分の靴は小さすぎて合わない。息子のスニーカーのような白い靴を探し出して、はいてもらった。
奥さんは大阪の方に移り住んだ。昨年出会った時、感謝の気持ちを聞いた。「靴のおかげで、けがをして入院したお父ちゃん(夫)の病院に行くこともできたんよ」。お互いに悲惨な体験だったからこそ、一足の靴の温かさが忘れられない。(梶川伸)=2002年1月26日の毎日新聞に掲載したものを再掲載2015.08.04

大国公園 阪神大震災

更新日時 2015/08/04


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